現場における意思決定のフィルタとしてのBI
こうした課題について、マイクロソフトはどんな解決策を提供しているのか。
マイクロソフトの考えるBIは、学術的な統計処理とは全く違う位置づけにある。その理由は、「意思決定」とは仮説を検証し、選択し、行動することであるためだ。選択肢のどちらが有利かを判断できれば十分で、特に現場においては、身近な分野であればデータが不足していても経験で補える。そこに複雑な計算は不要とされる。むしろ重要なのは、社員それぞれの「仮説力」であると考えているのだ。
そこで同社のBIは、現場の経験を活かすことを試みる。現場の経験に基づく「カン」が良い仮説を生み出すからだ。スピーディな仮説構築が、スピーディな仮説検証、そして「意思決定」につながる。BIが提供する事実が仮説構築のきっかけとなり、仮説検証の助けとなる。つまり、現場担当者が使ってこそ効果的なBIを指向しているのである。
米野氏は「現場の人に、BIを意思決定のフィルタとして活用してもらうことを考えている」と話す。
社員は自分のダッシュボードを開き、戦略マップで戦略を共有し、戦略マップと連動したスコアカードで成果を確認する。気になるスコアをドリルダウンしてデータを辿ったり、関係するドキュメントを参照したり、プロジェクトサイトにアクセスしたり、プロジェクトメンバーとコミュニケーションすることができるという。

もう少しだけ具体的に見てみよう。マイクロソフトのパフォーマンス マネジメントツールを見ると、いわゆるダッシュボードを提供する「モニタリング機能」に加え、OLAPなどの分析機能を提供する「分析・レポーティング機能」、さらにExcelのピボットテーブルにデータを入力すると、直接データベースに書き込まれる「プランニング機能」を備えている。
Excelのピボットテーブルからデータベースに書き込む機能を、なぜ「プランニング機能」と呼ぶのか。米野氏は、予算と実践のギャップという観点から次のように説明する。
例えば、営業部門では月次〜日次で売上予測を立てており、各チームは3カ月先の売上がどうなるかを予想し活動している。ただし、それらの業績見通し明細を全社レベルで集約し、企業戦略に生かしていく仕掛けがこれまではなかった。
そこで「予測をExcel経由で投入してもらう」という仕掛けを用意した。
一般に、多くの人がExcelベースで作業を行っているが、そのExcelシートがPCに留まったまま、集計データが上位層に上がっていくため明細が分からない状態になる。Excelで作業する普段の現場の業務を変えることなく、その作業がそのままデータベースに取り込まれ、リアルタイムに「見通し」を集約できる仕組みを用意したのである。
投入された見通しデータは、SQL Serverの多次元データベースに記録され、常に最新の状態の集計結果を社員が共有できるようになる。
「集計データの売上高に対してトップが20%アップした数字を設定し、各部門に対して予算データをトップダウン配賦することも可能。予算編成にも使えるし、データベースが備えたロジックを使用して、売上高がどう変化するかシミュレーションすることもできる」(米野氏)
マイクロソフトのパフォーマンスマネジメントは、これまで独立したサーバ製品として提供されてきたが、Microsoft Officeの次のバージョンからは「Microsoft Office SharePoint Server Enterprise」に統合され、SharePointの「PerformancePoint Services」として提供されるという。