長期IT戦略を策定しコスト低減と次世代旅行業モデルの実現目指す
JTBでは2005年から2009年にかけ、汎用機と専用OSによるレガシーをオープンシステムに移行させた。
当時、TRIPSは大きな課題を抱えており、「既存インフラをベースにさまざまな増築を重ねてきたため、類似のシステムができて処理の輻輳が起こるなど、オペレーションコストも上昇し、セキュリティにまで影響し始めた」という。こうした事情から、「システムの柔軟性の実現とコスト削減を狙い、オープン化に踏み切った」(志賀氏)
JTBではオープンシステムをさらに活かすために、2015年の完成を目処に「長期IT戦略」を策定している。目的は一層のコスト低減化とともに、次世代の旅行業モデルを実現させることだ。
新システムでは、データベース、インターフェースの共用化、APIの積極活用による他エンジンとの結合の簡素化、クラウドコンピューティングへの取り組み――などが軸となる。
なかでも重要になるのは共通APIによる外部システムとの交信だろう。
「従来、鉄道、航空会社のホストが改修されると、こちらもそれにあわせて改修していた。(これに対する)1つの解決策としてはホスト結合部分の共通化だ。実際、JRとのホスト結合を、昨年から旅行会社5社と共同で進めている」
クラウドの活用では「コアでない部分、つまりデータベースやメールシステムの一部をクラウド化する」が、「一方、コアとされている部分も、本当にコアなのか見直してみることも必要なのではないか」と述べている。また、「クラウドでは、安全性、信頼性の確保、障害時の対応などが重要になるが、まだ十分に整理されていない」とも見ている。
CIOの役割とは何か?
企業がシステム開発に着手する場合、経営層はコストパフォーマンスを最重視する。一方、開発部門はシステムへの過大な期待に顔をしかめ、業務側の論理の押し付けを嫌う。そしてエンドユーザーは、開発部門が業務側のプロセスを理解していないと嘆く。
このような「システム開発の3すくみ」を解決するため、JTBでは2005年に「IT戦略委員会」を設置。「課題認識の共有、参画意識をもつこと、コスト意識の徹底」などを論議した。
志賀氏は「このような3すくみ状態を解決し、3者間を調整するのはCIOの役割だ」と語り、講演を終えた。