エンタープライズソーシャルコンピューティングの導入に立ちはだかる10個の問題 - (page 4)

文:Dion Hinchcliffe(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子

2009-08-04 08:00

8.コミュニティマネジメントにまつわるニーズの発生が驚きをもって受け止められる。ソーシャルツールによって、理解を共有し、一体感を持つだけではなく、コミュニティ自身に内包される方向性に従った顧客コミュニティが生み出されるようになる。こういったコミュニティはいずれ一人歩きを始めることになるだろう(そしてそうあるべきだ)が、適切なマネジメント(支援やサポート、指導、介入、管理、計画)を行わなければ、あなたの関与できないところで進んでいくことになるはずである。コミュニティマネジメントとは、コミュニティ自身の要求を満たしつつも、彼らを企業やその目標/ニーズにつなぎとめておく能力のことである。エンタープライズソーシャルコンピューティングのあらゆる観点から見たニーズに対応できる人材マネジメントスキルや、チームの規模、技術、コミュニティマネジメントのためのツールといったテーマは、業界としてまだまだ学習する必要があることなのである。なお、筆者としては、多くの企業でソーシャルコンピューティングが成熟しつつある現状を踏まえ、2009年中にこの話題について取り上げようと考えている。

9.持続的に社外のマネジメントを行うことの難しさがある。2008年の記事「オンライン顧客コミュニティのための12のベストプラクティス」で述べたように、多くの企業が独自のソーシャルコンピューティングイニシアチブを推し進めながらも幅広い顧客層を巻き込むことに難渋している。彼らがコミュニティを構築しても、彼らのターゲットである顧客層は自分たちが構築したコミュニティの方を好むという結果に終わることもしばしばあるのである。特に、企業の構築したコミュニティのアプローチに疑念を抱いたり、自分たちのニーズに対応しきれていない(特定のジャンル全般を扱ったり、ニッチなものを対象とすることなく、特定企業の1つの製品に焦点を当てているなど)と感じた場合にその傾向が強くなる。活気のあるソーシャルコンピューティング環境の構築は未だ科学に負けないほど芸術の比重が高く、顧客の関心を引きつけることは従来からある高価なマーケティング手法やPRチャネルを通じていつでも可能である。とは言うものの、ソーシャルビジネスにとっての新たな法則を学ぶということは本当の意味で役に立つはずなのである(関連英文記事)。

10.予想以上の成功を収めたことにより、継続が困難になる。エンタープライズソーシャルコンピューティングが早い段階で大きく、かつ予想以上の成功を収めたという話を最近よく耳にするようになってきている。しかし、こういった成功によって、企業内から大きな注目が集まるようになり、その後社内での勢力争いや、主導権の奪い合い、競合する取り組みとの対立が起こるなかで、急速に成長する野心的な事業の資金確保に苦労するようになったという話も聞こえてきている。多くの企業にとって、ソーシャルコンピューティングというものは事業を進めるうえで、まったく馴染みのない方法であるため、新たな取り組みが急速な成長を遂げた場合、きっちりした管理や、計画の立案、期待レベルの設定を行わない限り、災いの元凶となりかねないのである。社内で味方になってくれ、周囲からの尊敬も得られている後援者の強力なネットワークを作り上げることが、この問題に対処するうえで特に有効となるはずである。

 2009年に入り、数多くの企業がより高度なソーシャルコンピューティングを模索するようになってきている。このため、本記事で挙げている問題は氷山の一角に過ぎないはずである。筆者は本記事の一環として、そしてソーシャルコンピューティングコミュニティ全体がどういった問題に直面しているかを知るために、エンタープライズソーシャルコンピューティングの世界で起こっていることをより完全なかたちで把握したいと考えている。そこで読者の方々にお願いがある。これら以外にも問題があるという場合、コメント欄を通じてそれを教えてほしい。教えていただいた問題については、今後の記事でまとめる予定である。

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ

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