「需要予測ソリューション」を活用するALSOK
ご存じの方もおられるだろうが、製造業ではない綜合警備保障が、SASの需要予測ソリューションである「SAS Demand-Driven Forecasting」を、コンビニATMの現金管理業務に活用している。その考え方はなかなか面白い。
同社は、金融機関の委託を受けて、コンビニATMへの現金の装填、回収、精査や、障害発生時の対応、機械警備を行っている。ATMに万券、千券を正しく配置する行為は、コンビニの棚に正しく商品を配置するのと同じであり、現金管理業務も実はサプライチェーンであると考えたのだ。
前出の宮田氏は「1アイテムが1万円だとすると、かなり高額な在庫と言える。100億円を調達するとして、10%が在庫だとすれば10億円。経営インパクトはかなり大きい」と話す。
過剰な資金の準備や、過剰な現金の回収と補填は、運用コストに大きく影響する。特に日本銀行からキャッシュを調達する際に金利がかかるため、現金在庫量と欠品の双方を最小化したい。従って、必要資金量の予測が極めて重要になるわけだ。そこで同社では、サプライチェーンの考え方を用いて需要予測を行い、資金運用計画を最適化しているのである。
実ビジネスに利用され始めた分析と最適化
横浜銀行やふくおかフィナンシャルグループでは、ワン・トゥー・ワンマーケティングに「SAS Event Based Marketing」というソリューションを活用している。金融機関は精緻な顧客情報とトランザクション情報を持っており、これらのデータを組み合わせることによって、極めて高度なマーケティング活動を展開できる。
例えば、ある顧客の口座に退職金と思われる入金があった場合、国債などの資産運用を提案する、といったことをシステマチックに行いたい。トランザクションをイベントとして捉え、そのイベントをトリガーとして最適なアクションをとる。これが一般的なEvent Based Marketingの考え方であり、従来の金融機関のシステムでは実現できていなかったことだ。
顧客管理・マーケティング分析ソリューションに含まれる「SAS Marketing Optimization」を利用すると、複数のキャンペーン実施において、チャネルキャパシティや予算などの制約条件、コンタクトポリシー等をふまえながら、実施するキャンペーン全体の期待収益を最大化する、最適な顧客とチャネルとキャンペーンの割り当てを導出することができるという。
制約条件を様々に変化させて、期待収益や実施コストにどのような影響があるのかをシミュレーションしながら最適化できるという。宮田氏は「流通小売業向けに価格の最適化を支援するソリューションもある。実業務に最適化を使っていただいているケースが増えている」と話す。
データ分析と聞くと「プログラミングが難しそうだ」「使いこなせそうにない」と敬遠される方も多いのではないだろうか。しかし、2004年にSASのプラットフォームが「SAS 9」になってからは、「Enterprise Guide」というツールを用いて、ほとんどの分析をGUIで行えるようになった。現在では「99.9%ノンプログラミングで分析できる」という。難しいSAS言語を覚える必要はなく、分析手法さえ理解すればよいのだから、ずいぶんハードルは低くなった。もはやSASのツールは、現場で使える「高度な分析機能を持った業務アプリケーション」に変わった、と言ってもいいかもしれない。
この特集「不況を生き抜く戦略立案の基礎」では、全12回にわたって、「戦略とは何か」という基本的なことから、その立案と実行を支援するITツールの実際までを見てきた。自社に適した、運用しやすいツールを活用して、正しい戦略を立案し、確かな成果の獲得につなげていただくことを願っている。