デスクトップ仮想化に対するユーザーの関心が高まっている。IDC Japanが8月3日に発表したところによると、デスクトップ仮想化への関心を示す企業は42.5%に上り、試験導入を含めすでに導入している企業は14.5%という。
こうした状況下で、仮想化技術を提供するベンダーも積極的にこの分野でビジネスを展開しようとしている。Citrix Systemsもその1社だ。同社のXenDesktop製品グループ プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント Sumit Dhawan氏は、デスクトップ仮想化の導入メリットについて「デスクトップの管理コストが削減できること」を挙げる。OSやハードウェアのアップグレード作業が簡素化されるほか、ソフトウェアのパッチあても一括で管理できるためだ。また、「セキュリティが確保できることは何ものにも代え難い大きな利点」(Dhawan氏)と主張する。
ただ、デスクトップ仮想化を導入するにはコストがかかるのも事実だ。特に経済不況が続く今、導入コストが障壁となって導入に踏み切れない企業も多い。この点についてDhawan氏は、「Citrixでは、既存のPCをリフレッシュする予算内でデスクトップ仮想化が導入できるソリューションを提案できる」と話す。例えば、PCの買い換えサイクルを4年とすると、1年で約25%のリフレッシュコストを予算に組み入れることができる。その予算をデータセンターのサーバ購入に充て、既存PCに対してデスクトップストリーミング技術を使いサーバ上のデスクトップ環境を提供する。4年が経過した時点でPCをシンクライアントに買い換えればいいというのだ。
「PCを買い換える予算を使って新技術を導入し、その時点から管理コストの削減が可能となる。これはCitrixのストリーミング技術があるからこそできることだ。こうすれば本来の設備投資の予算を上回ることはない」(Dhawan氏)
Citrixは2009年1月に、Intelと共同でアプリケーションデリバリソリューションを開発すると発表している。これは、Intelの企業向けプラットフォーム「vPro」にクライアントハイパーバイザ「XenClient」を搭載するというものだ。年内にも提供されるというこの技術が実現すれば、例えば個人が自由に使うデスクトップ領域はローカルに置き、企業のデスクトップ領域は仮想環境で利用するという、2台のPCの役割を1台で済ませることもできる。
この技術は、OEMベンダーがプリインストールして出荷する方向でIntelとベンダーが交渉しているという。「まだどのベンダーがプリインストールして出荷するかは決まっていないが、ベンダーの関心は高い」とDhawan氏。また、この契約はIntelとCitrixとの独占的な契約ではないため、「将来的にはAMDのプラットフォーム上でも同様の技術が提供できるようにしたい」とDhawan氏は語る。
現在、デスクトップ仮想化ソリューションは、各企業の専用サーバ内で運用するプライベートクラウド方式が主流で、Dhawan氏も「当面はこの方式が主流となるだろう」としているが、デスクトップ仮想化で共有サーバを利用するパブリッククラウド方式についての検討も始まっているという。パブリッククラウドの普及が進まないのは、OSを提供するMicrosoftが月額ライセンス方式を提供していないことも原因のひとつではないかとの声もあるが、Dhawan氏は「それよりもユーザー企業がプライベートクラウドに関心を寄せていることが大きい」と説明する。ただし、今後ユーザーのパブリッククラウドへの関心が高まれば、Microsoftがライセンス体系を考え直す可能性もあるだろうとし、「Citrixでも一部のSI企業とパブリッククラウドでのデスクトップ仮想化について検討を始めている」とDhawan氏は述べた。