- 新興企業の製品の大半は、エンタープライズ向け製品よりも「Enterprise 2.0のスイートスポット」寄りに作られている。総じて言えば、これはこの種のアプリケーションの大半が、ゼロから立ち上げた企業や、大規模なソフトウェアベンダーと比較すると蓄積の少ない企業が設計したものだからだ。後者のタイプの企業は、提供内容とその企業がすでに獲得した顧客が使用しているソフトウェアとの間の調和をとらなければならない。そこには重複や衝突が生じる場合もある。また、分布図全体を見ると、真に傑出したEnterprise 2.0製品は少ない。一般的に見られる失敗が受け継がれているのは残念ですらある。複雑性や重厚な作り、使いづらさという、以前からあるソフトウェア製品の問題が現れている。Web 2.0期のアプリケーションは非常にうまく仕上がっている傾向が強い。その理由はまさにシンプルで階層が少なく、使いやすい点にある。また、エンタープライズ製品は必ずしもユーザー獲得のために日々戦う必要がなく、その結果、自社製品のオープンソース版やSaaS版を出さない場合には競争力が幾分失われる傾向にあるということも付け加えておく。
- 純粋にコンシューマー向けの製品やオープンソースの製品は、多くの場合、スコアは高くなかった(右上に行くほど得点が高い)。これはエンタープライズ向けの機能が含まれてないことによる結果だ。Enterprise 2.0はWeb 2.0を起源に持つことを考えれば、それ自体驚くべきことではない。実際、最終的にオープンソース化した企業(SocialText)やオープンソースソフトウェアを基にエンタープライズレベルの製品を作り上げた企業(TwikiとAcquia Drupalがその例だ)が最高点を出している。
- 市場には、まだ競争力のあるEnterprise 2.0製品を出す余地が残されている。Enterprise 2.0市場分布図は、はっきりした釣鐘曲線を描いている。最高のスコアと最低のスコアの部分に分布する製品は比較的少ない。さまざまな項目で際だって優れている製品はあるが、すべてにおいて強い製品はわずかだ。つまり、新規参入者にも明らかにチャンスがあることになる。ビジネス上の要件を満たし、かつソーシャルビジネスツールの持つ力を顧客に提供できる新製品なら、価値方程式に集中し、中でも高レバレッジや利用性の向上、効率、参加者を巻き込むアーキテクチャに注力した設計を行えば、勝機はある。
- Enterprise 2.0 で成功を収めるには、単に主なコミュニケーションツールとして使えるという以上のものが必要になる。横串検索機能や、よく設計されたポータル、コミュニティ管理ツール、ソーシャル分析機能、セキュリティツール、既存のITシステムとの統合などの機能は、ソーシャルソフトウェアを組織内で活用する上では、どれも結局必要なものだ。リストに示したツールは、Web 2.0スタイルのコラボレーションを直接実現するためのもので、サポートツールではないことに注意して欲しい(サポートツールも必要になるだろう)。
- 忘れてはいけないこと:ソーシャルビジネスを考える上では、ツールは後から検討すべきものだ。優秀で高機能のツールがEnterprise 2.0を成功させる過程で大いに助けになるとはいっても、ツールありきで考えるのはやめた方がいい。リストを見れば、ソーシャルコンピューティング戦略との関連においてどのようなツールがあるのかがわかるはずだ。ソーシャルコンピューティング戦略では、一般的には事業目標や目的、要件をまず規定し、それから最適なツールを判断する。
Enterprise 2.0市場分布図を作成する際の採点は、製品説明と製品の試用(可能な場合には使ってみたが、半数に満たなかった)を基にして行う方法をとった。記述の不足や誤りがあればそれはすべて筆者の責任だ。本稿が、現在ビジネスユースで利用できるEnterprise 2.0の選択肢を示す全体像となり、調査に有用な資料となれば幸いだ。
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この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ