過去の過ちにとらわれていませんか? 懺悔室のススメ--田代センセーのメンタルテクニック(29) - (page 2)

田代真人(マイ・カウンセラー)

2009-09-03 08:00

 これは非常に宗教的な行為であることは確かですが、翻って私たちの普段の生活を考えてみると、もしかしたら前向きに生きるためにはとても重要な行為なのかもしれないと思うのです。もちろん、このような行為がまったく必要のない方がいらっしゃることはわかっています。そもそも懺悔する必要のない方が多くいることも知っています。しかし「誰かに相談したい」と思うことは、日常よくあることではないでしょうか。

 数年前、「コーチ」という言葉が出現し、いまや当たり前のように耳にしています。現在は「メンター」という言葉をよく聞くようになりました。「コーチ」とは、自己実現のために自分を指導・訓練をしてくれる人ですね。一方「メンター」とは、仕事中心ではなく、主に「心の友」のような役割を担う存在で、仕事やそれ以外の時間、もしくは生き方について、あなた以上に深い知識や経験をもつ人です。求めに応じて相談に乗り、真摯な姿勢であなたに助言してくれます。

 心から信頼でき、相談できるメンターの存在は、混とんとした現代社会では必要な存在なのかもしれません。メンターは1人とは限りません。時に「3人のメンターを持て」と言われるように、年代や経験分野などによって異なるメンターが複数人いると心強いものです。

 しかしメンターは無理に探して出会えるわけではありません。私は、メンターとは日常の生活の中で、自分自身で考え、悩み、前に進むことによって出会えるものだと思います。出会いの中に「この人は私のメンターになり得るかもしれない」と思う方がいらっしゃるかもしれません。その縁に気付き、大事にしていくことがポイントなんだと思います。

 メンターは、決して自分の過去の過ちを告白する相手ではないのかもしれませんが、いまから未来へ向かって進む私たちには必要な存在です。また前述したように、私たちは過去の過ちにとらわれることなく、懺悔し前に進むことも大切です。心の中で1人で懺悔することもいいでしょう。日本人は無宗教だとか、宗教的には雑食だとか言われています。しかし、もし懺悔室のような施設があれば、それはそれで受け入れ、実は前に進むために有効に活用できるのではないかと思っています。

 インターネットが当たり前の今、私は懺悔室の役割がネットで担えるのではないかと思っています。ネットの掲示板では何かを書き込むと、すぐに誹謗中傷の嵐と言えるような反応が返ってくることが多いようですが、それは書き込みがすべて公開されていて、誰でも匿名で意見を書き込めるような仕組みになっているからだと思うのです。仕組みさえしっかりと整えれば、1対1のネット懺悔室のようなものも可能でしょう。そのように、人の心を支える仕組みとしてのネットの活用が今以上に進化していってほしいと切に願っています。

田代真人
筆者紹介

田代真人
マイ・カウンセラー 代表取締役。九州大学工学部機械工学科卒業後、朝日新聞社を経て学習研究社へ。ファッション女性誌「ル・クール」編集者の後、主婦向け実用雑誌 「おはよう奥さん」の創刊メンバーとして、主婦の悩みを解決する「悩み相談センター」を開設する。その後ダイヤモンド社へ移籍し、「ダイヤモンド・ブレイク!」「ビットビジネス」など数々の雑誌を編集長として創刊した後、ビジネス開発本部副部長に就任。2006年、これまでの編集経験から「人々の悩みを解決したい」との思いに至り、マイ・カウンセラーを設立。2007年ダイヤモンド社を退社し、メディアプロデュース業のメディア・ナレッジを創業すると共に、マイ・カウンセラーの代表取締役に就任する。
ご意見、ご感想は mc-info@mycounselor.jp まで。

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