PC、携帯電話、ブラウザからのOfficeアプリケーションの利用について、沼本氏は「フルセットとサブセットという切り分けではなく、それぞれのデバイスでの利用シーンに合わせた機能を提供する」と説明する。まだプレビューは提供されていないが「Office Web Apps」と呼ばれる、ウェブブラウザベースのOfficeアプリについては、ドキュメント管理を行う「SharePoint Server」の拡張機能としてとらえるのが分かりやすい。Office Web Appsで編集可能なのは「Excel」「Word」「PowerPoint」「OneNote」の各ドキュメント。提供形態は、Office 2010をボリュームライセンス(SA)で購入する企業ユーザーに対してオンプレミス環境でWeb Appsを利用できる形で提供する者、「Microsoft Online Services」での提供、そしてコンシューマー向け「Windows Live」サービスの一部としての提供と、現時点で主に3つの形態が検討されているとする。(参考記事:「Office Web Apps」のテクニカルプレビュー版の8月中リリースは(結局)実現せず)
その他、個別のアプリケーションの強化も、もちろん行われる。「SharePoint Server」においては、リボンUIの採用のほか、Visioのドキュメントをブラウザ上で閲覧できる「Visioサービス」などの機能追加が行われる。また、従来「Office Groove」と呼ばれていた製品は、SharePoint Serverとの連携を高め、今回のバージョンから「SharePoint Workspace」という名称で提供される。また「Excel」にも、カラムや行の形式で並んだデータの推移を1個のセル上にミニグラフ化して表示する「スパークライン」や、特定の条件でフィルタリングしたデータのグラフ化をアドホックに行える「スライサー」といった機能が追加されている。
特に表現力に関して、大幅な機能強化が行われるのは「PowerPoint」だ。グラフィックチップのパワーを利用したさまざまなトラジションの追加に加え、スライドへのビデオの埋め込み、PowerPoint上でのビデオのトリミングやフィルタの適用などができるようになる。また「ブロードキャストスライドショー」と呼ばれる新機能では、PCに限らず、Windows Mobile端末やiPhoneなど、「ある程度モダンなブラウザを搭載した端末」(沼本氏)に対し、ネットワークを通じてプレゼンテーションをリアルタイムに配信できるという。
一般販売が10月に開始される「Windows 7」の持つ「マルチタッチ機能」のサポートも行われる。また、今のところあまり大きくアピールしてはいないが、Office 2010では、64ビット版のアプリケーションも提供されることが決まっている。沼本氏は「(ハードウェアやOSなど)プラットフォームの進化に合わせて、最新の機能を追加するというのがOfficeの存在価値」と話すが、Office 2010には、新OS、新ハードウェア、新UIへのニーズを先導するキラーアプリケーションとしての役割も求められることになる。