選抜
- 私の意見では、IT分野の人材の履歴書にはほとんど意味がない。よくても会話のきっかけになる程度のものだ。
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経験を重視しすぎないようにする。Guy Kawasaki氏は、Appleに雇われる前にも素晴らしい仕事をしていた。Carl-Henric Svanberg氏はEricsson(通信)をやめて2カ月後に、BP(石油・ガス)の会長になった。採用担当者は特定の技術や、特定の環境に関する業界での何年間かの経験を求めることが多い。
これがよくない、問題のあるやり方だという理由はいくつもあるが、ここでは1つだけを挙げておこう。才能とやる気があり、よく働く人は、普通の人なら3年かけて学ぶことを1年で学べる。この人物を最初に選びたいと思うのが当然だろう。しかし、もし3年の経験を条件にすれば、この人は選択肢に上ることさえない。経験を求めることは、人材ではなく慣習を求めているに過ぎない。 - 学位や資格を重視しすぎないようにする。われわれは技師や看護婦、医者などの規制のある職業以外についても、学校教育や資格に、本来あるべきよりも注意を払いすぎている。知識はほかの方法でも獲得することができるし、われわれはみな、いろいろな肩書きを加えることに興味を示さなかった、学校からドロップアウトした有名人を何人も知っているはずだ。
- 前掲のポイントをさらに推し進める。求めるのは必要なスキルだけにし、そのスキルに関係しそうな学位や資格を求めるのは止めるべきだ。 以前、ある有名組織の顧客サービスの責任者が私に、彼が持っている予算では英語を専攻した人材を獲得するのが難しいと言ってきたことがある。一体なぜ英語を専攻した人材が必要なのかと聞いてみると、彼は苦情に対して文章で返事を書くスタッフを必要としているのだと答えた。私は、ある程度上手に文章が書ける人を雇えばいいだけではないかと提案したのだが、彼にはこれは素晴らしい思いつきだったようだ。このスキルは簡単にテストできるものだったため、問題はすぐに解決した。
- ところでテストは、開発者を始めとして、多くの役職に関する人材の選抜に非常に有効だ。テストに関するよくある問題は、見当違いのテストが行われる場合があるということだ。開発者を例に取れば、文法に関する知識を問うテストをしたり、今いるスタッフが何ヶ月もの間取り組んでようやく解けた問題を解かせるというのは適切ではない。これは時間の無駄だ。あなたが求めているのは、専門領域の理解度や、考えるプロセス、そして知性のはずだ。多くの場合、小さなケースを使えばうまくいくだろう。
- 不適切な尺度を用いないようにする。プロジェクト予算は、プロジェクトの複雑さを表す尺度としては適切ではないし、プロジェクトマネージャの能力を表すものでもない。100人の従業員がいる部門を運営した経験がある人物が、300人のグループを運営できるということにはならないし、運営が上手だということにもならない。すでに指摘したとおり、あれやこれやの分野で長年の経験を積んでいるということも、あまり役に立たない指標の1つだ。
- 幅広いスキルと経験を持った人材を雇うこと。これによって、メンバーが互いに補い合うことのできる、有能で創造力に富んだチームを作ることができる。あなたと同じように行動し、考え、あなたと同じ外見をしている人間の集団を求めるのは間違っている。
雇用条件
- どれだけ心を惹かれても、どれだけ誰かの圧力を受けても、決して不公正な雇用条件を提示してはならない。もちろん、それで得られた蓄えなど、重要な従業員がよりよい条件を求めて突然去ってしまえば御破算になってしまうということもあるが、それは非倫理的なことだということの方が問題だ。
- ほかのあらゆる交渉ごとと同じように、志望者の優先順位を理解することは、双方が満足できる雇用条件を組み立てる役に立つ。
- 年功、年齢、性別、オフィスで過ごした時間などではなく、達成した仕事の価値に基づく報酬体系を確立すること。われわれは過去30年間、知識経済の中で生き、働いてきたが、そのような雇用を実現できている組織は多くない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ