アンチウイルスさえ導入していない企業も
経済不況でIT投資は全般的に伸び悩んでいると言われるが、セキュリティ対策の重要性は中小企業でも認識されており、「それほど景気の影響は受けない分野」と広瀬氏。特に、冒頭にも述べたシマンテックの調査では、日本の中小企業がグローバル市場に比べてセキュリティに対する問題意識は高いという結果が出ている。
ただし、それでも「アンチウイルスさえ導入していない企業が10%未満ではあるが存在するだろう」と広瀬氏。また、シマンテックの顧客企業の中でも「侵入防止機能が備わっていない古いアンチウイルスソフトを利用し続けている企業が60%ほど存在する」と広瀬氏は述べ、こうした企業に対してよりセキュリティに対する意識を高めてもらいたいとしている。
一方で、意識向上のためにセキュリティ対策のガイドラインを作る予定はないという。それは、技術が常に進化しているため、対応策も日々進化するためだ。シマンテックとしては、セキュリティの脅威に関するレポートなどを発行して意識を高めてもらうと同時に、「過去の攻撃で有効だとされていた対策も、今では侵入防止機能のついた最新のソフトを使えば特別な対策が必要ないケースもある。つまり、一番のセキュリティ対策は、常に最新のセキュリティ対策ソフトを使うということだ」と広瀬氏は語る。
セキュリティ対策の「見える化」が必要
現在、シマンテックが提供する中小企業向け製品は、8月に発表した製品のみだ。現時点でその他の中小企業向け製品を発表する予定はないが、「中小企業では、特に情報漏洩に対する関心が全般的に高い。また、専任の管理者がいない企業では、クライアントのバックアップにも高い関心が集まっている」と広瀬氏は述べている。
特に、取引先からの下請けで事業を行う企業や特定の機密情報を扱う企業などでは、「より積極的にセキュリティ対策に取り組む必要がある。取引先がセキュリティに対し、高い基準を求めるようになっているためだ」と広瀬氏。そのため、今後はどのようなセキュリティ対策が講じられているか、対策ソフトには何が採用されているかといったように、「対策内容が『見える化』できるようなツールも必要になってくるだろう」と広瀬氏は話す。
シマンテックでは、バックアップや資産管理などができる製品も提供しており、こうした製品との組み合わせで新たな中小企業向けソリューションが登場する可能性もある。専任の管理者がいない場合、使われていないソフトウェアライセンスが無駄になっているケースや、ハードウェア資産が最適化されていないケースも多いためだ。広瀬氏は、このようなソリューションのニーズが高いと見ており、「中小企業向けに提供する際には価格も最適化したい」としている。