なぜ、人は組織を作るのか。それは1人では成し得ないことを、複数の人が協力することで成し遂げるためだ。
本来、何かを成し遂げたい人のために組織は存在し、成し遂げたいことが「仕事」であるならば、組織は仕事のために存在することになる。
そして、仕事が組織の目的であるとき、人は組織全体のために働く。ときには、個人の楽しい時間を削ってでも、組織全体の利益のために働く。組織全体の利益の方が、個人の幸福より優先する状況も出てくる。
ここに、個人と組織の複雑な関係が見て取れる。
「組織」と「人」は幸福な関係?
極端な場合、組織のためなら、違法な行為と知りながら、ためらいなく法律を犯してしまう人もいる。例えば、社員が経営者の命令で、架空の政治団体を立ち上げ、その団体のメンバーとなって政治家に違法献金を渡す。組織の権力者の命令に、社員は盲目的に従ってしまいがちだ。
Chris Argyrisは、個人と組織の間には「根本的不適合」が存在すると述べている。人と組織はもともと幸福な関係にはなれないようだ。組織は人を支配する。とはいえ、人は何らかの組織とともに生きていくものである以上、常に自分の生き方と組織との関係を見つめながら、自分の核となる道を外さぬよう生きていくしかない。
さて、「人的資源活用」の観点で考えると、「組織」と「人」のそれぞれが持つ「力」に注目することになる。
しばしば、組織の力については「コアコンピタンス」という経営戦略論の概念で語られ、個人の力については「コンピテンシー」という人事的な概念で語られることが多い。
よく知られているように、コアコンピタンスはPrahaladとHamelが提唱したコンセプトだ。コアコンピタンスとは、いわば「自社にしかない価値」を顧客に提供する、他社には真似できない核となる能力のことである。競争力の源泉となる力といったイメージだろう。