ウェブOSとは何か
何をウェブOSだと考えるかについては、デスクトップOSを模倣するクラウド環境のことを指す場合もあれば、パッケージ化され、企業への個別の製品としてバンドル化された一連のサービスのことを言う場合もあり、もっとも広義には、包括的で創発的なインターネットOSのアイデアもある。データ、サービス、あるいはウェブのコミュニティまでもが、いまやプログラム可能であり、自由に組み込まれ、リミックスされて他のビジネスや製品の一部となる。ウェブOSの概念は新しいものではない。しかし、企業に大きな影響を与えうる、説得力のある形で登場したのは最近だ。
過去数年間、オープンAPIやソーシャルネットワーキングプラットフォーム、クラウドコンピューティング、オープンIDサービス、センサー駆動型データベース(例えばGPSとOpenStreetMap)、あるいは人間(例えばAmazonのMechanical Turk)などが、企業を含む誰もが、貢献する側としても消費する側としても、自由に参加できる開かれたエコシステムを作ってきている。ウェブは、今や究極のアウトソーシングプラットフォームになっており、しかも普通ならば共存することの難しい、非常に機動性が高いという特徴と、規模の経済性の両方を兼ね備えている。そして、課題もある。日常的に、しかも上手に処理する必要のある、予測不可能性とリスクが存在するということだ。
しかし、この変化の激しいビジネス環境で上手に振る舞うためには、ウェブOSのサービスの利用を検討したり、ウェブOSの中で自社の事業を提供することを検討している組織は、古典的な提携関係、OEM関係、戦略的ではあるが伝統的に変化が乏しいベンダーのポートフォリオなどから離れて考える必要がある。それらの行動はどちらも高度に戦略的な選択であり、この世界では、サービス利用規約で「OK」ボタンをクリックし、いくらかの(願わくば安全な)コードを自分の組織のITシステムに追加すれば、それでサプライチェーンをつないだり、オンライン提携が行うことができるのだ。
過去18ヶ月間に数多くの信頼に足るサービスが雨後の竹の子のように登場したことで、ウェブOSは流れの速いビジネスチャンスの川となった。計算能力、インフラ、ソフトウェア、労働者、知識、イノベーションに決まった時間内に接続し利用する環境を、評価し、活用するためのプロセスを設けることは、この歴史上もっとも豊かなビジネス資源になる可能性のあるものを活用しようとする従来型の企業にとっては、大きな試練の1つになるだろう。
おそらく今もっとも注目を集めているトレンドはクラウドコンピューティングと、ウェブを戦略的サービスの自己組織化プラットフォームとして捉える見方(SaaSがその背後にある)だろうが、ウェブOSのその他の多くの要素も、自分の組織の将来を見据え、改善していこうとしているビジネス思想家から見逃されているわけではない。