2009年のウェブOS、5つのトレンド
以下では、新興のウェブOSが今年のITとビジネスをどう変えているかを挙げていく。
- イノベーションは、多くの組織が利用できる、もっとも簡単でもっともリスクの少ない分野の1つだ。マーケットリーダーであるNetflixに関する現在進行形の話と、今では有名になった同社のNetflix Prizeコンテストのエピソードは、組織が 製造プロセスに直接的に干渉することなく、アイデアを公開して、利用することができ、しかもその最終的な結果が、運用上の改善につなげることができることを示すモデルとなっている。DellやInnocentive、Crowdspring、その他の企業がここ数年にわたって同様の試みを進めているが、ウェブOSからのインプットが直接的に、具体的で明確な、競争力のある結果に繋がっている、成熟した例が見られるようになったのはごく最近だ。
- サードパーティ仲介者の規模と経験が大きくなるに従い、垂直的および水平的なクラウドソーシングモデルがより現実的なものになってくる。垂直的なクラウドソーシングは、その領域が専門的で、スキルや業界での経験を必要とする場合に使われる。水平的なクラウドソーシングは、その仕事がほぼ誰にでもできる場合のことだ。前者は後者よりも一定の規模に達するのが難しい。どちらが必要とされる場合にも、現在では直接的なクラウドソーシングを行うこともできれば、Mechanical TurkやInnocentiveのようなウェブOSのオンラインサービスと提携することもでき、IdeaScaleやKlusterのようなプラットフォームを使うことも、あるいは自分で手がけることもできる。
- ウェブOSに参加する準備をするには、企業はデータの整理の仕方、共有の方法、オープン化の仕方について再検討する必要がある。私は最近、この主題についてより詳しく議論している。この課題は、エンタープライズアーキテクトやSOAの専門家が取り組むべきものではあるが、企業が情報技術を使いこなす方法をしっかり理解するためには、ビジネスストラテジストもこの問題に精通しているべきだ。
- オープンなサプライチェーンに動的に接続することは、運用を新しい見方で捉え直すことを意味する。これは、ITとビジネスにおいて、選択は日常的な運用になりつつあることを意味している。また同時にこれは、ビジネスプロセスの連続性と決定論的な性格を保ちながらも、新たなサプライヤーや、処理の能力やスピードにおける突然で急速な変化、運用の新たなモードを素早く取り入れることが、一般的になることをも意味している。これを推し進めるには、オープン標準が役立つはずだ。クラウドコンピューティング環境では、実際のビジネスニーズを満たすことのできる標準が作られつつあり、現在ではまだ例外的なものに過ぎない着脱可能なサプライチェーンが、一般的なものになると思われる。
- SaaSは、ウェブOSの導入には危険な要素をはらんでいる。私が交流を持っている大きな組織の多くは、オンデマンド型のウェブアプリケーションの形態を取っている不良IT企業が、より深刻な問題(あるいは、見方によってはチャンスにもなり得るが)となっていると話している。多くの、あるいはほとんどの組織においては、ウェブOSとの戦略的な繋がりとしてのウェブのバイラルなオンデマンドソフトウェアへの最初の対応が、将来のウェブOSに対する適応能力を決める。そこで得られた教訓やポリシーの多くは、その後より大きな範囲と意味においてウェブOSと本格的に関わるために活かされるべきだ。この例には、計算能力やデータセンター機能のアウトソーシングや、匿名的な存在であることも多いクラウドワーカーから、重要なビジネス上のインプットを安全に取り込んでいくことも含まれる。
もちろん、他にも多くの要素がある。しかし、IT部門はビジネスにとって、より戦略的な存在になるか、邪魔にならないものになるかのどちらかを選ばなくてはならないことは明らかだ。その一方で企業もまた、実際に使えるデジタルの「DNA」を育てる必要がある。なぜなら、これらの戦略の多くは、依然として伝統的な考え方に固執している多くの役員には忌諱されることの多い、最新のデジタルプラットフォームを理解していないビジネスリーダーや経営者にはまったく理解できないからだ。最後に、私は、現在のように幅が広くなったウェブOSも、まだその幼年期にあると考えていることを記しておく。
この世界最大で、もっとも活力あるエコシステムは、現在の平均的な規模の企業と比較すると、文字通り何百万倍も、何千万倍も大きい。これは、われわれの考え方さえ変えることができれば、巨大な力を手にすることができるということだ。この動的でグローバルな資源から隔離された企業や、(あるいはより悪いのは)不適切に接続された企業に対して、これが何を意味するかを考えてみると、大きな課題もある。しかし、見誤らないで欲しい。ウェブOSは、戦略的なビジネスやITについて追いかけている人ならば、絶対に押さえておくべきトピックだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ