精神的Personal Spaceも主張すべし
もうひとつ注意しなければいけないのが、精神的なPersonal Spaceへの侵入です。もちろん、お互い好感を抱いていて、双方がビジネスでのお付き合いからプライベートなお付き合いへと発展させたいと考えている場合は何も問題ありません。その気持ちが一方通行の場合がややこしいのです。
ここでのポイントは、ビジネスでのお付き合いにとどめておきたい相手からの個人的なデートの誘いを早めに感知すること。そして、勘違いさせないような対応をすることです。
例えば「Let's exchange e-mail addresses」(メールアドレスを交換しよう)と言われた場合。「Sure. My e-mail address is on my business card」(いいですよ。名刺に書いてあります)と言えば、「ビジネス用のアドレスを使ってね」という婉曲的な表現になりますね。最近では会社のメールは内容をチェックされていることも多いので、プライベートのアドレスを教えないのは大きな防波堤になります。
次に、「What are you doing tomorrow night?」(明日夜は何してるの?)と言われた場合。日本語にするともろにお誘いなのですが、英語で聞かれると、中学校の英語の授業を思い出して素直に予定を言ってしまった人もいるのでは?
プライベートで誘われたくない人から予定を聞かれたら、目は笑わず、でもとりあえず口角は上げて「I already have an appointment」(約束が入ってます)とはっきり言いましょう。何度聞かれても同じように繰り返せば、相手も安易に誘ってはこなくなるでしょう。しらけてしまいますからね。
言葉だけでなく、表情で表現するのはとても大事です。日本人は表情が分かりにくく、勘違いされる傾向が強いので、多少大げさに表現してもいいと思います。もちろん、「I'm going out with my boyfriend/girlfriend」(彼氏/彼女とデートするんだ)と言って、彼氏や彼女がいることを暗に示すのも一手です。
それでも、あまりにしつこくされたら、「It's none of your business」(あなたには関係ありません)と、きっぱり言いましょう。最初は口角を上げて対応してあげたのですから、今度は嫌悪感を全面に出してもバチはあたりません。
最初の対応が肝心なのは言うまでもありません。後でごたごたとトラブルになってストレスをためないよう、まずは自分のPersonal Spaceをしっかり守るためにImaginary Wallを認識し、Wallを破ってくる人たちを事前に検知し対応することが重要です。
「上司だから言いにくい」などと考えず、自分を守りましょう。仕事上の関係であればあるほど、きちんとすべきことなのです。いくら英語がうまくても、こういったことをうやむやにしていると、国際人としての資質を問われますよ。
Peace out,
Eric
筆者紹介
エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。著書に「クラウドコンピューティングの幻想」(技術評論社)がある。
イラストレーター: まつなが みか
つぶやく日本人や音楽にまつわる「人」のイラストを描く。CDジャケット、ショップ、雑誌等で活動中。エリック松永の愚妹。