レベル3は、業務とITの連携による業務コストの削減。プロセス・人・ITといった業務全体のコストを削減するITを導入することです。そしてレベル4は、イノベーションの実現。さらに一歩進んで、プロセス改善、ビジネス再編といったイノベーションを実現することです。
このレベルは、1から4へステップアップするほど難易度が高くなりますが、一方でビジネス価値も上がります。こうしてみると、レベル1と2が「ITコストの最適化」であり、レベル3と4が「ビジネスコストの最適化」であることがお分かりいただけるでしょう。言い換えれば、前者が“守り”、後者が“攻め”のコスト最適化ともとらえることができます。
その観点で言うと、世界のCIOの多くはレベル3や4の取り組みを始めています。一方、日本のCIOは、レベル1や2の取り組みにとどまっているケースが多い。したがって日本のCIOは、これからこのレベルを上げて“攻め”のコスト最適化をめざすことが肝要だと思います。
――日本のCIOは、“守り”に終始してしまっているというわけですね。
日高 今回の調査では、こんな結果も出ています。
ビジネス面での優先事項を聞いた世界と日本のCIOの比較調査(図3)によると、「企業コストの削減」は両者ともに2位ですが、世界のCIOが「ビジネスプロセスの改善」を1位に挙げているのに対し、日本のCIOは「既存顧客との関係強化」を1位に挙げています。既存顧客との関係強化と言うと聞こえはいいですが、つまりは自らの改革よりも苦しい時の顧客頼みとも受け取れます。
さらに世界のCIOが挙げたビジネス面での優先事項では、「要員の業務効率の改善」や「情報分析機能の利用拡大」といった項目が上位に入っています。ちなみに、この2項目は、日本のCIOは10位内にも挙げていません。つまり、世界のCIOは1位に挙げた「ビジネスプロセスの改善」をはじめとして、ビジネスの“攻め”に貢献しようという意識が強いことが如実に表れているんですね。非常に興味深い調査結果だと思います。
日高信彦(HIDAKA Nobuhiko)
ガートナー ジャパン代表取締役社長。
1976年東京外語大外国語部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。27年にわたり同社のビジネス・ソリューション事業で数多くの業績を残す。1996年、アプリケーション・システム開発部長。1999年、CRM社内ベンチャー・コアポイントのアジア・パシフィック担当ジェネラルマネジャー。2001年、アジア・パシフィックCRM/BIソリューション統括。2002年、eビジネス・ソリューションズ CRMソリューションズ参与。
2003年4月、ガートナー ジャパン株式会社代表取締役社長に就任。
テクノロジのトレンド、マーケットのトレンド、他のユーザーがどのようにITを使いこなしているのかという3つの情報を正確に、満遍なく収集し、同時に、ガートナーに蓄積されたグローバルな情報をベースに、迅速かつ的確なアドバイスで日本企業の経営戦略策定をサポートしていくことを掲げている。
ガートナー ジャパンでは、2009年11月11日〜13日に「Balancing Cost, Risk and Growth―ITで挑む、視界ゼロ時代の競争と成長―」をテーマに「Gartner Symposium/ITxpo 2009」を開催する。
Gartner Symposium/ITxpoは、ガートナーが毎年、企業のCEOおよびCIOをはじめとするITリーダー向けにリサーチの集大成を発表している世界最大級の戦略的ITイベント。本シンポジウムでは、CIO向けの提言を含め、さまざまな角度からITでビジネスの競争と成長に挑むための具体的指針・施策・展望を提言する。