これまでは、ベンダーが自社開発のアプリケーションをクラウド対応させようとすると、多大な追加開発が必要だった。しかし、アプリケーションオンデマンドは、ほとんど追加開発をせずともSaaS化が可能だという。
ユーザーはアプリケーションをシングルテナント方式で供給可能。また、社内サーバにアプリケーションを置き、社内クライアントに配信するモデルを構築することも可能であるという。
これらのしくみの中核となるのは、ビットアイルのデータセンターに構築されたサーバプールとParallelsの仮想化技術「Parallels Virtuozzo Containers」(PVC)と、仮想環境マネジメントツール「Parallels Business Automation」(PBA)だ。
ベンダーがアプリケーションをデータセンターのリポジトリサーバに登録すると、PBAがアプリケーションの選択、販売およびライセンスを管理し、PVCはアプリケーションをクラウドで利用できるように変容させる。
また、社内クライアントに配信するモデルを構築する場合、社内のサーバにPVCを組み込んでおくと、そのサーバへアプリケーションを自動でインストールし、ライセンス管理も行う。これにより、ハードウェアとセットでアプリケーションを販売するといった従来型の間接販売チャネルでの流通モデルも維持することが可能になるという。
ベンダーがSaaSでソフトウェアを提供するようになると、ネット経由の直接販売やライセンス課金への変更が求められ、既存の流通網を活用できないといった販売面での大きな課題があったが、ビットアイルではアプリケーションオンデマンドでこうした問題に対応したい考えだ。
アプリケーションオンデマンドは現在、Linuxにのみ対応しているが、今後はWindowsへの対応も予定している。
ネオジャパンとアクセルビットがSaaSを提供
ビットアイルはアプリケーションオンデマンドの開始にあたり、ネオジャパンとアクセルビットの協力を受けている。
アクセルビットはアプリケーションオンデマンドを活用し、オンデマンドアプリケーションポータル「AXLBOX」を通じて、ネオジャパンのグループウェア「desknet's」のアプリケーション群を提供する。
ネオジャパンはアプリケーションオンデマンドを用い、desknet'sなどのアプリケーションを社内構築型で提供する「Private Applitus」(仮称)を2009年末までに投入する予定だ。
サービス化が進む今、クラウド基盤を提供

ビットアイル マーケティング本部 事業推進部 部長の高倉敏行氏は、「企業のIT投資の余力は限られてきており、投資は選別的になってきた。ITインフラの統合化、標準化の流れが強くなり、ビジネスの環境変化に機敏に対応できる能力が企業に求められている」と指摘。
続けて「このような潮流を受け、さまざまなビジネスプレーヤーが、ソフト、ハード、ソリューションをサービスとして提供する傾向が強くなっている。クラウドコンピューティングは、これらのサービスを供給するための基盤。我々はこの基盤を提供し、プレーヤーに選択肢を提示、支援していきたい」と抱負を語る。

ネオジャパンの取締役でオンデマンドアプリケーションサービス事業統括の狩野英樹氏は、「クラウド化やSaaS化の流れに不安感を抱いているアプリケーションベンダーは少なくない。今回のサービスは彼らのアプリケーションをほぼそのままSaaS化しやすいしくみであり、新しいモデルだ」と話す。
ビットアイル、ネオジャパン、アクセルビットの3社は、アプリケーションオンデマンドを軸にベンダーの参画を募り、多様なアプリケーション提供の形態を後押ししていく意向だ。
ビットアイルとネオジャパンは2009年1月に資本提携しており、共同で仮想化技術を基盤としたSaaSおよびASPプラットフォームサービスの開発に取り組んでいる。