ユーザーにとっての意味
ブラウザでの作業に違和感を覚えない人々(Facebook世代のほとんどの人が含まれている)にとって、Google Appsは優れたエクスペリエンスを統合したかたちで提供してくれるものであり、保有しているあらゆるドキュメントにアクセスしたり、それを組織内で共有することも簡単に行えるようになっている。具体的には、検索、クリックするだけでドキュメントを開き、編集できるようになっているわけだ。そして、もう1度クリックすればそのドキュメントを世界中の人々と、あるいは社内でオンライン共有したり、特定のユーザーのみが編集できるように設定することもできる。また、Gmailとの統合はシームレスなかたちで行えるようになっており、複数のユーザーが1つのドキュメントを共同で編集する際に起こりがちな驚きを最小限に抑えることも可能になっている。さらに、ユーザーは気軽にログインし、オンラインのライブプレゼンテーションに参加し、プレゼンターの操作によって、あるいは非同期にプレゼンテーションの閲覧を行いながら、その場でチャットや質問を行うことも可能となっている。
それでもGoogle Appsは、Microsoft Officeとは違ったものに見える。多くの人に愛用されているOffice 2003にさえ似てはいない。
Google Appsとは要するに、コンテンツを(多くの場合に他の人々と協力し合って)作り上げるための仕組みである。これは素晴らしい仕組みである一方、きめの細かいフォーマットを用いて品質の高いデスクトップパブリッシングを実現するという目的には向いていない。Google Appsを使って、あなたの会社の企業案内を作成できるものならやってみてほしい。Adobe InDesignと同じようにはいかないはずだ。Google Appsは見た目に優れたドキュメントを作成するということよりも、複数のユーザーが協力し合って優れたドキュメントを作成するということに長けているのである。
一方、Office Web Appsはメールとドキュメントがうまく統合できておらず、ドキュメントを開いたり共有したりするための操作も煩雑なものとなっている。しかし、Office製品を使用しているという実感は確実にある。テクニカルプレビュー版ではWord文書の編集を行うことはできないものの、デスクトップ版のOfficeで作成されたドキュメントを高い精度で表現することができる。
この点だけでも、Google AppsではなくOffice Web Appsを選択する理由としては十分かもしれない。筆者は数年前、Dr. Martensブランドの靴を愛用していたのだが、それは筆者が履いてきた靴のなかで最高のものだった。履き心地が良く、とてもお気に入りの一足だった。防水性がとうの昔に失われてしまった後も履き続けていたが、滑りやすい場所でも転倒することはなく、職場で最もぼんやりしているIT担当者にとって最適の靴だった。同じような思いをOfficeに対して抱くユーザーもかなり多いはずである。正直なところ、筆者は未だにDr. Martensの靴に未練を持っている。