Firefoxの未来
Raskin氏によれば、次々期バージョンとなるFirefox 3.7では、「Flashのプロセス」(あるいはメモリを激しく使用するアドオンやプラグイン)を他のプロセスと分離し、それだけを独立したプロセスとして処理するようになるため、メモリ管理は従来よりも改善されるという。
その先のFirefox 4.0はまるで次元の違うものになるという。Internet Explorer 6が優勢だった4年前(欧州連合の騒動が持ち上がる前)、オンライン上でのユーザー体験は新味の欠けたものだった。IEチームはレイオフされ、残った人員の取り組みは停滞していた。ウェブはコンピュータを使った体験の中で最も重要な要素のひとつであることから、他のあらゆるプレーヤーがこの市場に参入した。参入者が増えて以前よりも競争が激しくなったため、Raskin氏は変革の決め手を見極め、次に何を開発すべきかを決定した。
Raskin氏は次の2点を重要だと考えた。
- FacebookであれTwitterなどを通した形であれ、ウェブが現在機能している方法で、自分自身のWebサイトを作れることは疑いなく素晴らしいことだ。誰もが参加できるということが、多くの作業や役割のあり方を変えており、ジャーナリズムもその変化の渦中にある。
- HTMLとJavaScriptを使った「純粋な」Webサイト構築に関する知識を少し得れば、それらを組み合わせることで新たなFirefoxの拡張機能を作ることができる。これが「Ubiquity」に力を入れているもう1つの理由でもある。
Firefoxが大きな成功を収めた理由の1つは、拡張機能やアドオン、カスタマイズ性、外観の変更が可能であるなどの特徴を備えていることだ。Firefox以降、他のブラウザもこれにならって追加ツール提供し始めた。
Firefox 4.0は、2010年末ごろリリースされる予定だ。しかしこれは開発段階での計画であり、リリース予定は定期的に見直される。次期リリースの「目玉機能」の1つがJetPackで、これは自分が使いたいテクノロジや開発言語を使ってアドオンを作成できるAPIだ。前述の2つめの話題と関連があり、相乗効果のある機能だ。
この後、話題は実に広範囲にわたり、マルウェアやセキュリティ、次世代デスクトップのWebブラウザ化といったテーマにも話が及んだ。
セキュリティとインシデント予防
現在流通している他のソフトウェアと同じように、Firefoxも有名なソフトウェアの1つとして攻撃の標的になりつつある。Raskin氏によれば、最先端の「何らか」の機能がJetPackに追加され、他のセキュリティ技術に追加される形で今後搭載されるアドオンの安全性を確保するという。
彼は、現在のブラウザはユーザーの「信頼の仲介役」を果たしており、セキュリティ上の問題に関してユーザーにアドバイスや情報を提供していると表現している。SSL証明書のドメイン名が一致しない場合やサイトがフィッシングに遭っていることが疑われる場合、ブラウザはそのことを教えてくれる。これは車の運転と同じだ。車に乗って運転をするとき、運転者はそこにある道に沿って進む以外のことはあまりできない。そして自動車のボディは、その道のりで否応なく出くわす道の段差や接触から運転者を保護してくれる。
Mozillaはプライバシには非常に配慮しており、特に欧州連合圏のユーザーには配慮している。2009年10-12月にはFirefox Mobileが公開され、Raskin氏によればデスクトップのブラウズ体験がモバイルユーザー、特にNokia製品ユーザーに広がるという。Firefox Mobileには同期機能があり、タブの履歴やパスワード、閲覧履歴をデスクトップとモバイルの間で同期できるようになる。ブラウザを開きっぱなしにしてオフィスから出ても、携帯電話で続きを閲覧できるようになるわけだ。
これを実現するのに用いられる暗号化技術には公開鍵暗号を使い、Mozillaはクラウド中にアクセスデータをまったく保存しない。Raskin氏によれば、警察がやってきてMozillaが法令に基づいてデータを提出することがあっても、Mozillaにさえそのデータが復号化することはできないという。