経営戦略とひも付く表現が必要と書きましたが、IT戦略がすべて経営からの要請に基づいたものになるわけではありません。経営戦略にひも付く形で立案されるIT戦略を支える格好で、IT部門の実力アップを図るための戦略も必要となります。
- 人材育成
- ITガバナンス構築、マネジメント力の向上
- 安定していて柔軟性のあるアーキテクチャー(インフラ、アプリケーション)標準の構築
- 技術要素の目利き、調査研究
- システム導入の効率化施策
このようなテーマなどもIT戦略には必要となりますが、これらを目に見える形で成果にすることは非常に難しいことです。そのため、経営戦略に貢献するためにIT部門が持たねばならない必須の機能として理解してもらい、できるだけ具体的な目標を設定しましょう。例えば、人材育成に関しては、資格取得者やUISSの定義に合致する人材を何人養成する、システム導入の効率化施策としては、方法論の導入と適用するPJの数的目標などといったように。
このあたりの施策は、従来だとまず達成できていなかった部分でしょう。しかし、具体的にコミットメントすることで、義務として取り組む必要性を持たせることが重要なのです。
他にも、経営戦略からは読み取りづらいが、社会的責務として取り組まなければならない法制への対応やセキュリティ対策、CO2排出抑制対応、事業継続計画などの施策も載せていく必要があるでしょう。
その必要性は経営層なら十分に理解すると思いますが、どこまでお金をかけてやるのかを明確な基準で説明する必要があります。例えば、事業継続計画への取り組みは、想定される被害額をどう見積もるかによって対応策が決まります。そして、災害や事故の規模をどう定義するのかは常に議論すべき問題でもあります。その議論を具体的な数字を使ってリードしていくことで、IT戦略として載せる場合に経営者の理解が得られていくことになります。
これらの経営戦略に直接ひも付かないテーマをどうリンクさせて理解してもらうかが、CIOの腕の見せ所でしょう。
次回は、IT部門とユーザー部門との関係改善や、IT部門自身がサービス部門としてどう変わっていくべきかについて考えてみたいとおもいます。