Linuxプロジェクトの利害調整は「面白さ」感じる--L・トーバルズ氏 - (page 2)

富永恭子(ロビンソン)

2009-11-05 14:09

 Linuxプロジェクトは、かつて、このフィンランド人のハッカーがヘルシンキの学生だった頃、MINIXと呼ばれる小型のOSをテストしたことから始まった。

 MINIXとは、オランダのアムステルダム大学教授であるAndrew Tanenbaum氏によって、UNIXを理解するための教材用として開発されたUNIX互換OSのことだ。

 当初、Torvalds氏はたった一人で、自分のコンピュータのためだけに、このフリーでオープンソースのMINIXをハッキングし、拡張と改良を行い始めた。

 そのうち、ふと彼は、プログラムをインターネットで公開して、他のハッカーたちと共有したらどうかと思いついた。そして、1991年4月25日、彼はプログラムへの意見を求めるため、次のようなメールをハッカーたちに送った。

 「I'm doing a (free) operating system(just a hobby, won't be big and professional like gnu) for 386(486) AT clones. This has been brewing since april, and is starting to get ready.- Linus Torvalds.」

 すると、人々は、彼が拡張と変更を施したプログラムをダウンロードしてテストし、エラーやバグを修正して、コードを改良し始めたのだ。大勢のハッカーたちによって、さらに改良されたプログラムは彼のもとに返され、改良版として再びリリースされた。

Linus Torvalds氏 Linus Torvalds氏

 彼が趣味で始めたオペレーティングシステムのカーネル改良は、彼の名にちなんで「Linux」と名付けられ、やがて多くの人が協働するプロジェクトとなった。以来、18年間にわたり、止まることなく改良とリリースを繰り返し、自然発生的な好循環を生み出していったのである。

 Linuxの改良は、熱意に満ちたコミュニティによってますます進められた。それらのコミュニティを仲介し、束ね、変更をLinuxとしてリリースするかどうかを最終的に判断するのが、彼の役割となった。

 また、他の厳格で支配的なソフトウェア開発とは対照的に、彼は多くの人の新たな提案や修正へのアイデアを歓迎し、できるだけ広く多くの内容を取り入れようとした。協力者のコミュニティを尊重し、プロジェクトを導きつつ、論争など問題解決のためにどうしても必要な場合以外は権力を行使しない。

 その謙虚で気さくなスタイルが「善良なる独裁者」というニックネームを彼に与え、このプロジェクトの文化となった。

企業や個人の利害調整「むしろ『面白い』」

 普段、Torvalds氏は自宅の地下にある仕事場で作業に明け暮れ、Linuxの会議にも年に2回、出席する程度であまり旅行や出張はしないという。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]