前回(「研修」は期待大でも効果小、その原因は?--調査で明らかになった人材育成の課題)は、企業が持つ人的資源の価値を高めるための「人材育成」に関する現状について見てみた。今回からは、人事の業務を支援するIT、すなわち「人事システム」に焦点を当てて見ていくことにしよう。
まず人事という特殊な職務を理解しよう
人事システムについて考える前に、まずは人事部門の職務について整理しておこう。企業は、様々な職務によって運営されている。それぞれの「職務が果たす役割」を表す言葉として「職能」がある。ここで、企業に存在する主な職能を挙げてみる。

図に示すように、人事は生産や販売、会計といった企業における主な職能のうちの1つに位置づけられ、いわゆる「基幹業務」に含まれる。人事は経営資源の中の「ヒト」に関するあらゆる職務を担っている点が、他の職能とは異なっている。
大阪市立大学大学院教授の下崎千代子氏は、それぞれの職能は業務(Operation)と管理(Management)に分けることができ、管理はさらに、業務統制(Operational Control)、管理統制(Management Control)、戦略計画(Strategy Planning)の3つで構成されるとしている。
ただし、人事においては、人事業務そのものと管理的業務が明確に分離されず、「業務遂行と同時に、業務統制や管理統制が不可分に遂行されている」と指摘している。このあたりは、人事職能の特徴と言えるのだろう。
上位の戦略計画レイヤにおいては、将来の人員構成および支払賃金の予測や、長期経営戦略に則した人材の採用あるいは育成の計画などが行われる。また、賃金体系を左右する人事方針もここで決定されるのである。