活用進まぬ人材管理--原因は?
従業員の「能力」に着目した人材管理(Talent management)の機能については、国内ではまだ、活用している企業は少ないという。
人材管理の仕組みについては、コンピテンシ管理などに本気で取り組む企業と、まったく関心のない企業との差が激しい。浅利氏は「人事部門の発想を変えないと人材管理は進まない。人事部門は、従業員の職務経歴、職務内容をデータ化し、蓄積する気があるかどうかにかかっている」と指摘する。
人材管理の導入が進まない理由は、顧客の商談内容や反応を営業員が蓄積していく作業に成否がかかっていた、SFAやCRMがたどった道と同じである。
SFAはかつて、営業員の「管理職は楽になるだろうが、入力した自分に何のメリットがあるのか」という心理的反発から、思ったように運用が進まないケースが多かった。人材管理においても同様に、従業員のキャリアや職務内容がすべてデータ化されることで、「人事担当である自分の価値が下がるのではないか」という抵抗感を生んでいるケースがあるようだ。
もちろん「冷静な人事担当は、蓄積したデータをどう使うべきかを心得ており、そこから先が本当の人事の仕事だと分かっているため、決して自分の仕事がなくなるとは思わないはず」と浅利氏は話す。
また、経営者の方針や判断も重要だ。経営者が人材管理やコンピテンシ管理の重要性を認識していても、人材をどのように処遇し、どのように配置していくかについての判断をしていない場合、人事担当は動かないことが多いそうだ。
浅利氏は「経営者が本当に人材の流動性をビジネスのコアと認識している企業でなければ、高度な人材管理は行っていないのが日本国内の現状だろう」と言う。
日本において人材管理を行っているのは、「グループ企業内において組織の枠を超え、必要な仕事に必要な人材を配置する」というポリシーが極めて明確な企業に限られるようだ。