「そうした企業では、経営者が必要とする人材を見つけたら10日間で異動させている。米国においては優れた人材の離脱を防ぎ、必要のない人材はどんどん切らなければならない。そのためにも人材管理は欠かせない機能だ。人材管理が米国企業ほど必要ないということは、日本の企業は幸せなのかもしれない。人材管理の活用度合いは、日本の経営者がどれだけ本気で人材を資産として見ているか、どれほど危機感を持っているかと強く関係する」(浅利氏)
浅利氏は、人事関連業務の仕組みを外部に出し、本気で人材管理に取り組んでいくようになると、いよいよ今度は人事部門のコンピテンシが問われることになる、とも指摘する。
最後に今回の話から、企業における人事システムのありかたについて、考えるべき点を整理しておこう。
ひとつは、「非典型雇用のデータをどこに置くか」という問題だ。それは、内部か、外部か。非典型雇用のデータを外部に置くなら、典型雇用のデータも外部に置いて良いのではないかという議論も起きそうだ。
もうひとつが「フロントエンド」。シングルサインオンの仕組みや入退室管理の仕組みをどのように横展開していくのかといった問題だ。遠からずインターフェースはすべてウェブベースになっていく。すると、どこにデータがあってもマネジメントは可能となるのではないか、という視点だ。
将来的に、機能的にほとんど差がない業務の仕組みがサービス化されると、外部のサービスを選択して、内部システムと組み合わせて利用していくスタイルが考えられる。そうしたサービスにシステムリソースも動的に提供されるようになると、いよいよ「クラウド」の世界になっていく。
今回は、人事システムと企業の動向について、専門家の浅利氏に伺いながら考えてきた。次回以降は、実際に人事システムを提供するベンダーの動向を見てみよう。