データの中に「人を生かす」アイデアが見えてくる--ワークスに聞く人材管理ツールの未来形 - (page 3)

梅田正隆(ロビンソン)

2009-12-03 14:38

 さて、話を現実に戻そう。土屋氏は「人材活用のキーポイントとなっている人材育成の活動を、最大限の効果を出しながら実施していけるようにすることも、日々の変化の中にあっては、非常に重要なことだと考えている」と言う。中長期的な施策も重要ではあるが、いま行っている取り組みの意味を高めていくことも重要であり、それはより簡単にできるはずだとも指摘する。

 「パッケージを使ってできることはある。できることからやってみると、その先が見え、今やっていることの改善点が見えてくる。そこを変えてみることによって、さらにその先が見え、次第に良くなっていくこともある。(人材管理分野でのパッケージ活用については)最初から大鉈を振るうのではなく、できることからコツコツとやっていきましょう、と提案している」 (土屋氏)

 例えば、同社のツールを導入済みなら、研修管理は今日からでもやれる。管理しないと履歴さえ残らない。履歴の活用方法は土屋氏らが提供する。「データとして何を集めるべきか」で長い間悩んでいる顧客もいたそうだ。「集めてみないと、集めたものに価値があるか分からないし、何を集めるべきか否かも集めてみないと分からない。集めたものを活用するときに、システムの威力が発揮される。システムの活用法は我々が提供できる」という。

人事担当者の「気づき」を誘発する仕掛け

 土屋氏らは今、同社の人事パッケージにおけるレポーティング機能を改善中だ。これまでも、厳密に集計して分析した結果をレポートしたり、履歴をすべて網羅して出力したりといったことは可能だったが、さらに「データから着想を得る」ための機能追加を検討しているという。

 データをグラフ化して抽象化し、例えば社歴のグラフや、実施している研修の割合のグラフ、部門別の人事品質の割合を示すグラフなど、複数のグラフを1つの画面に並べて表示する仕組みなどが検討されている。こうしたグラフをまとめて表示すると、それを眺めた人事担当者は頭の中で様々な算盤を弾き、やるべき施策を思いつく可能性が高いのだという。こうした試みは実に面白い。

 人事担当者のノウハウをすべて機能に落とし込もうとすれば、たいへんな時間がかかる。そうではなく、システム側で必要でありそうな情報をまとめて、人事担当に提示する。それだけで、人事のプロフェッショナルは多様な判断を下せるはず、という発想だ。土屋氏は「判断材料をうまく出力できる仕組みを提供することができれば、それがユーザーに貢献する一番の近道になるはずだ」と話す。

 履歴の中には多くのヒントがあるはずだ。人事担当者に気づきを提供する機能の実現に期待したい。

 さて、今回を持って、本特集「再興に備える『人的資源活用』の基礎」も最終回となった。景気回復を見据え、人的資源の棚卸を行い、組織のあり方を再評価して、ビジネスの再興を着実なものにする。そのための、人的資源活用について考えてみることが、本特集の狙いであった。読者の皆様に深く感謝申し上げるとともに、各記事が皆様の会社で人材活用を考える際に、ささやかな「気づき」を与えるものとなることを願っている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    2025年はクラウドを標的にする攻撃が増加!?調査レポートに見る、今後警戒すべき攻撃トレンド

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. ビジネスアプリケーション

    業務マニュアル作成の課題を一気に解決へ─AIが実現する確認と修正だけで完了する新たなアプローチ

  4. 経営

    プロが教える“使える業務マニュアル”--作成・運用を実現する3つのポイント

  5. セキュリティ

    Microsoft Copilot for Security--DXをまい進する三井物産が選んだ理由

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]