さて、話を現実に戻そう。土屋氏は「人材活用のキーポイントとなっている人材育成の活動を、最大限の効果を出しながら実施していけるようにすることも、日々の変化の中にあっては、非常に重要なことだと考えている」と言う。中長期的な施策も重要ではあるが、いま行っている取り組みの意味を高めていくことも重要であり、それはより簡単にできるはずだとも指摘する。
「パッケージを使ってできることはある。できることからやってみると、その先が見え、今やっていることの改善点が見えてくる。そこを変えてみることによって、さらにその先が見え、次第に良くなっていくこともある。(人材管理分野でのパッケージ活用については)最初から大鉈を振るうのではなく、できることからコツコツとやっていきましょう、と提案している」 (土屋氏)
例えば、同社のツールを導入済みなら、研修管理は今日からでもやれる。管理しないと履歴さえ残らない。履歴の活用方法は土屋氏らが提供する。「データとして何を集めるべきか」で長い間悩んでいる顧客もいたそうだ。「集めてみないと、集めたものに価値があるか分からないし、何を集めるべきか否かも集めてみないと分からない。集めたものを活用するときに、システムの威力が発揮される。システムの活用法は我々が提供できる」という。
人事担当者の「気づき」を誘発する仕掛け
土屋氏らは今、同社の人事パッケージにおけるレポーティング機能を改善中だ。これまでも、厳密に集計して分析した結果をレポートしたり、履歴をすべて網羅して出力したりといったことは可能だったが、さらに「データから着想を得る」ための機能追加を検討しているという。
データをグラフ化して抽象化し、例えば社歴のグラフや、実施している研修の割合のグラフ、部門別の人事品質の割合を示すグラフなど、複数のグラフを1つの画面に並べて表示する仕組みなどが検討されている。こうしたグラフをまとめて表示すると、それを眺めた人事担当者は頭の中で様々な算盤を弾き、やるべき施策を思いつく可能性が高いのだという。こうした試みは実に面白い。
人事担当者のノウハウをすべて機能に落とし込もうとすれば、たいへんな時間がかかる。そうではなく、システム側で必要でありそうな情報をまとめて、人事担当に提示する。それだけで、人事のプロフェッショナルは多様な判断を下せるはず、という発想だ。土屋氏は「判断材料をうまく出力できる仕組みを提供することができれば、それがユーザーに貢献する一番の近道になるはずだ」と話す。
履歴の中には多くのヒントがあるはずだ。人事担当者に気づきを提供する機能の実現に期待したい。
さて、今回を持って、本特集「再興に備える『人的資源活用』の基礎」も最終回となった。景気回復を見据え、人的資源の棚卸を行い、組織のあり方を再評価して、ビジネスの再興を着実なものにする。そのための、人的資源活用について考えてみることが、本特集の狙いであった。読者の皆様に深く感謝申し上げるとともに、各記事が皆様の会社で人材活用を考える際に、ささやかな「気づき」を与えるものとなることを願っている。