しかも、今回の協力関係では、DWHアプライアンスである「SQL Server 2008 Fast Track Data Warehouse」について、デルから供給を受け、これを新日鉄ソリューションズ独自の仕様として、今年度内には市場に提供するという体制をとった。まさに、これまでのマイクロソフトと新日鉄ソリューションズとの関係には見られなかった踏み込みぶりとなっているのだ。

新日鉄ソリューションズ業務役員、ITインフラソリューション事業本部ITエンジニア事業部長の大城卓氏は、「中小企業向けのアプライアンスとして、1000万〜1500万円程度で提供する。検討から導入までの期間が短くなり、これにより、中小企業から大手企業までのフルラインアップが整うことになる」と説明。今回のマイクロソフトとの協業が「中小企業を対象としたもの」とするが、これからの協業関係がどう発展するかは注目されるところだ。
助走を始めた「SQL Azure」
一方、今回の発表では、SQL Azureが2010年2月に商用サービスを開始し、一方で、2010年上期中にSQL Server 2008 R2の製品版が投入されることが明らかになった。
マイクロソフトでは、この2つの製品がシングルアーキテクチャであり、シームレスにつながることを前面に打ち出した訴求を同時並行的に行うが、実際のビジネスとしての成果の見込みには大きな温度差を持たせている。
SQL Server 2008 R2は、「業界平均以上の成長率によって、シェアを拡大させることが最低限の目標」(五十嵐氏)とし、「ビジネス拡大」を至上命題とするが、その一方でSQL Azureは、「2010年上期に関しては、具体的な売り上げ計画を達成するというよりも、このビジネスモデルをいかに市場に定着させるか、これから10年のビジネスをどう描くかが最優先課題」とする。
つまり、同社の2010年度が終了する2010年6月までは、SQL Azureについて、売り上げという観点ではそれほど重視しないというスタンスをとっているのだ。
「SQL Azureにおいて最も重要なのは、パートナー各社が、このクラウドという新たなビジネスに、どんな可能性があるのか、どんな広がりがあるのか、収益モデルが確立できるのかという点を検証し、理解してもらうことにある。マイクロソフトは、そのための支援を強化し、一緒にビジネスを考えていきたい」とする。
まさに「助走」という言葉が当てはまるのがSQL Azureに関する、これから半年間の動きになる。
だが、この助走次第で、7月から始まる新年度の計画が決まるのは明らかだ。そして、助走が加速すればするほど、マイクロソフトのクラウドビジネスの飛翔は大きなものになろう。ジャンプに向けてどの程度の速度で「助走」をするのか、それが楽しみである。