世界経済にビルトインされているIFRS--日本企業はいま何をするべきか

野村直秀(アクセンチュア IFRSチーム/経営コンサルティング本部 エグゼクティブ・パートナー 公認会計士) 2009年12月10日 19時27分

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世界同時不況の陰にIFRS?

 新たな会計基準として、「国際財務報告基準(IFRS)」が注目されている。

 この世界的な会計基準が重視されるようになった最大の要因は、世界規模での資本市場の一体化という現象だ。ここ10年で、欧米や日本などの先進国に限られていた資本市場も、新興国の台頭で、その規模を拡大し、ボーダーレス化も進んだ。この流れにより、世界規模で資本活動を展開する基盤が不可欠となり、資本市場内での会計ルールや制度を統一化することが急務となった。

 その後、2005年に欧州連合(EU)がIFRSを正式採用し、EU内で資本活動する外国企業にもIFRSでの開示を求めたことが、IFRSを“グローバルスタンダード”に押し上げる大きな流れを作ることになった。日本のIFRSへの取り組みは遅れているが、IFRSの考え方や体系はすでに世界中の会計システムの中にビルトインされているといっても過言ではない。

 2008年後半からの世界同時不況も、IFRSが大きな影響を与える一因となっている。今回の不況の引き金になったのは、米サブプライムローン問題やそれによる証券大手Lehman Brothersの経営破綻だが、その一国の金融危機が瞬く間に世界を駆け巡った。そして、その波及スピードを加速させたのは、IFRSに通じる財務報告制度に対する新しい考え方だった。

 日本の従来の会計基準が過去の状況をできるだけ正確に報告するという考え方で成り立っているのに対し、IFRSでは財務報告の中に将来の見通しを反映させるという考えで成り立っている。たとえば「減損会計」や「繰延税金資産」といった考え方がある。

 減損会計は、業績が悪化して投資額の回収が見込めなくなった場合、当該事業に関わる資産の帳簿価額にその価値の下落を反映(評価減)させる手続きのことだ。一方、繰延税金資産は、将来的にその企業が利益を生み出すことができず、税金を払う余裕がない場合は繰延税金資産を取り崩すという考え方である。

 両者とも、企業の将来性を加味して財務報告を行うというIFRSの原則に基づいている。たとえ、まだ企業が同時不況の影響を受けていなくても“先行きが見えない”という経営の見通しが財務諸表に反映されることにより、急激な財務状況の悪化を招くこともあり、この流れが世界同時不況のスピードを加速したことは間違いない。

 一方で、統一した規制基準の普及も世界同時不況の波及スピードを加速する一因となっており、その一つが銀行の世界統一基準である「BASEL II」(自己資本比率規制)だ。

 BASEL IIは、株価の下落や所有している土地の価格の下落によって資本が棄損した場合、その棄損または減損した資本、リスクキャピタルに見合うだけの貸し付けのみを認める基準だ。この基準を遵守するためには、銀行は貸出規制を行う必要がある。つまり、資本が棄損すると貸し付けが厳しくなり、その影響を受けて企業の経営状況が悪化するという、二重三重の悪影響が企業や経済全体に広がり、それによって波及スピードが加速されることになる。

 さらに、日本でも投資家の判断に資する財務情報を迅速に提供するため、四半期開示が一般化している。そのため、上述したような財務状況が適時に投資家に開示されることになった。このような国際財務報告基準に組み込まれているいくつかの要素が、今回の世界同時不況に大きなインパクトを与えたことは確かである。

IFRSの3つの潮流

 それでは、IFRSは従来の日本の会計基準とどこが違うのだろうか。IFRSは、まさにその正式名称である「International Financial Reporting Standards」にあるように、国際的に活用される財務諸表を提供するための基準だ。現在の日本の会計基準と比較し、IFRSには以下3つの特徴がある。

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