コンシューマー市場でMSに勝算はない?--M・アンダーソン氏の2010年業界予測を読み解く

文:Mary Jo Foley(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:末岡洋子 2009年12月14日 11時38分

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 Microsoftはコンシューマー/開発者にフォーカスした企業としてスタートした会社だ。同社はその後、状況に合わせて戦略を変え、最もエンタープライズにフォーカスしたベンダーとなった。最近、Microsoftは「コンシューマーは神様」として、フォーカスを再度シフトしている--少なくとも、それが会社の戦略であり、予算を費やしている部分だ。

 だが、チーフソフトウェアアーキテクトのRay Ozzie氏をはじめ、同社の幹部が進めている“コンシューマーと法人向けの世界の統合”“エンタープライズは重要でない”が誤りだったとすれば、どういうことになるのか?--影響力のあるマーケット観測者、Mark Anderson氏(ニュースレター「Strategic News Service」の執筆者)は、融合どころか、コンシューマーと法人の両市場の間に大きな溝が深まっていると考えているのだ。

 Anderson氏の発言は、(Microsoft自身を含む)多くの大企業の幹部、ベンチャーキャピタリスト、その他の影響力のある人々から重要視されている。そのAnderson氏が12月10日、米ニューヨーク市で今後の予測を披露する年次ディナー会を開催した。Anderson氏が紹介した2010年のハイテク業界の予測リストのすべてが想定外というわけではなかったが、その中にMicrosoftを震え上がらせるような内容が入っていた。以下が10の予測だ。

  1. 2010年は“プラットフォーム戦争の年”になる。ネットブック、携帯電話、タブレット、クラウド標準などでプラットフォーム戦争が繰り広げられる。クラウドはコンシューマーの世界(PicnikやAmazonなど)をサポートする傾向に動き、エンタープライズは引き続き自社のデータセンターを構築するだろう。ネットブック分野は、今後も大きな増加率で成長するだろう。
  2. 2010年は“OS戦争の年”になる。各種「Windows 7(W7)」や「Mac OS」、それから各種「Linux」のほか、「Symbian」「Android」「Chrome OS」「Nokia Maemo 5」など。勝者はW7、Mac OS、Android(出荷順)。皮肉なことに、W7は、創作力不足とPC中心のプラットフォームという特性から、モバイルプラットフォーム経由で他のベンダーがシェアを奪う余裕を与えてしまうことになる。
  3. あらゆるコンテンツがモバイルに移行する。全てにタグが付き、マルチチャネルとなり、囲い込みは終わる。中でもTVと映画コンテンツは、行き詰った古いビジネスモデルを打開することになるだろう。われわれは今後、初公開のTVや映画を有料コンテンツとして携帯電話で見ることになる。これは、4つ目の予測につながる。
  4. モバイルアプリとモバイルコンテンツにより、小額決済(マイクロペイメント)への移行が加速する。これにより、小額決済はニッチからメインストリームの決済方法になるだろう。コンテンツに料金を支払うことへの反応は、年齢により異なる。35歳がおよその境界線となり、それ以下は払わず、それ以上は払う。
  5. 携帯電話対PC。2つの道への分岐(エンタープライズ対コンシューマー)。注意:携帯電話は現在、最も興味深いコンピュータプラットフォームであり、ソフトウェア、ビジネスモデル、ディストリビューションなどでイノベーションが起こっている。ネットブックは次の推進役となるだろう。
  6. クラウド大変動が起こるだろう。セキュリティ懸念が増加し、エンタープライズの信頼性が制限されることで、クラウドの成長が阻まれる。クラウドは産業スパイにつながるものと認識する最高情報責任者(CIO)もでてくるだろう。
  7. コンシューマーとエンタープライズ(政府/企業)間で大きな溝が生まれる。コンシューマー側の企業はApple、Google、多数のアジア系ハードウェア企業で、エンタープライズはDell、IBM、Cisco、Microsoft。HPは両方となる。2010年以前は、コンシューマーとエンタープライズの統一といわれたが、今後両者は分離の方向に向かう。
  8. Microsoftはコンシューマー分野で、ゲームを除いては敗北する。Microsoftにとって、コンシューマー分野はゲームオーバーだ。これにより、コンシューマー市場は確固としたエキサイティングな変化が起きる理想の場所となるだろう。
  9. 生き残っているニュースメディアは、有料サブスクリプションモデルに移行する。各社は、全体もしくは部分的にサブスクリプションモデルを導入するが、読者の反応は年齢によって異なる(4を参照)。
  10. 現実世界の人やモノが遠隔にあるデータに接続するというアイディアにより、エキサイティングな新しいデバイスやアプリケーションの誕生につながる。可能性のある例としては、リアルタイムでの比較、レシピを利用したショッピング、(ソーシャルな場での)顔認識と略歴情報のリンク、電話によるセルフガイド式ツアー、自分の個人的な環境に対する音声クエリなど。これらの多くは今日の段階で技術的に可能であることが実証されているが、エキサイティングでまったく新しいトレンドとして2010年以降に登場するだろう。

 Microsoftはモバイル市場で巻き戻せる望みはないというAnderson氏の主張は、多くのMicrosoftウォッチャーが感じていることだ(わたしはAnderson氏のような予測はしないが、Microsoftが2010年に公開する「Windows Mobile 7」で、崖っぷち状態から這い出せる(少なくとも、シェアがゼロになることを防ぐ)ような隠し技があると予想を立てているところだ。Microsoftは、最新のOSを提携先の携帯電話メーカーに配信する時期とこれらの携帯電話が消費者に届く時期の差を、現在の6カ月以上から数週間レベルに短縮することを示唆しており、これは初めの一歩となりそうだが)。

 しかし、7番目のコンシューマーとエンタープライズの間で溝が深まるという予想が現実のものになったなら、Microsoft、とりわけOzzie氏には大きな悲運となる(もしMicrosoftが、信頼性を獲得している得意のエンタープライズへとフォーカスを戻さないなら)。

 Anderson氏は、Ozzie氏が描く3つの画面とクラウドにより構成される「美しい世界」が現実のものになるとは思っていないようだ。問題の1つは、Microsoftがモバイルでの失敗を回復できないことだ、とAnderson氏は主張している。だが、強固なバックエンドプラットフォームと密に統合できるフロントエンドプラットフォームとの連携が重要である、という考えそのものが共感を得ていない。その代わり、顧客は、完全に統合されたユーザーインターフェース(アプリケーション、マーケットプレイスなど)とそれほど強固ではないバックエンドとを統合するという方に関心を示している。Apple、Androidなどはここで有利な立場にあり、勝算が高い、とAnderson氏はディナーの場で語った。

 Anderson氏はOzzie氏は友人であるとしながら、Ozzie氏が比較的近い将来、Microsoftを辞めることになっても驚かない、と述べた。Ozzie氏はMicrosoftの自制のない社風に馴染み難さを感じており、Ozzie氏の3つの画面ビジョンと「コンシューマーエクスペリエンスが第一」をベースとしたプッシュがユーザーの支持を得ない場合、Microsoftに居続けたいと思うだろうか?その必要があるだろうか?

 わたしは、IT理論のコンシューマー化を信じている方ではない。また、これまでにも何度か、Microsoftは自社を過小評価しすぎであり、コンシューマーにフォーカスを強め過ぎることはエンタープライズユーザー戦略から乖離するリスクを負うと感じてきた。Microsoftが2つの会社--コンシューマー向けとエンタープライズ向け--であるとすれば、それぞれのユーザーときちんと向き合い、フォーカスを分散させるべきではない。

 これまで、Anderson氏の予測の実績は感動的なレベルで実現している(Anderson氏がディナーの席で語ったところによると、2009年の予測リストの正解率は95〜97%だったとのことだ)。コンシューマーとエンタープライズの溝がさらに深まっている--これは正しい観測だろうか?Microsoftの3つの画面戦略は、絵空事に過ぎないのだろうか?

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ

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