次世代企業の原動力は--エッジ企業を突き動かすものを考える - (page 3)

文:Dion Hinchcliffe 翻訳校正:石橋啓一郎

2009-12-22 13:15

 このサービスでは、すでに100年分以上の新聞と印刷された資料のアーカイブをデジタル化しており、今後さらに大きく拡大していくことができる。もし読者のビジネスがこのサービスと何らかの形で競合しているのであれば、身を粉にして働かざるを得ないことになるだろう。この、ほとんど無限で無料の精神的および肉体的な作業(文字の読み取りと入力)は、事実上ただで調達されている。しかし、本質的に重要なのは、これを本当にコントロールしているのは彼らではなく、このシステムを利用しているパートナーであり(そのことによってユーザーは恩恵を受ける)、その恩恵は全員が受けることができるということである。この、ネットワーク上で緩やかに共有された協調関係は、21世紀のビジネスモデルでは途方もない規模と価値を生み出す可能性があることの一例に過ぎない。詳しく調べていくと、ほとんどすべてのビジネスで同様の例を見つけることができる。

アナロジーと実際の変化

 極端な見方(さほど極端とは言えなくなってきているが)をすれば、ウェブの到来は、古典的なビジネス生態系に対して巨大隕石の落下と同じような影響を与えている。これによって、世界中で環境の急速な変化に伴う種の絶滅が起こっており、これは今でも続いている。生き残ることができるのは、その影響から隔離されているたくましい種と、適応に成功した種だけだ。その結果登場する、現在注目されているインターネットクラウドは、先住種をほぼ完全に取り囲み、彼らがかつて成長の糧としていた栄養物を断ち切って、容赦なく飢餓に追い込んでいる。これは、新たに環境に発生したガゼル(このアナロジーにおいては、ガゼルはウェブ企業を意味する)と、その他のより動きの速い快活な種(コミュニティ)によって引き起こされた変化だ(訳注:gazelleには鹿に似たウシ科の動物ガゼルの他に、新興中小企業の意味もある)。これらの新しい種は、恐竜の何分の1かの費用と労力で物事を行うことができ、食物連鎖から直接価値を引き出すことができる。

 しかし、恐竜絶滅のアナロジーはここまでにしよう。実際にはどのようになっているのだろうか。次世代のビジネスモデルは、正確にはどんなものになると思われるのだろうか。それらの組織はいかにして、成長や収益、その他の価値を生み出し、顧客や株主に対する本物の価値を提供するのだろうか。そのヒントは、これらの企業は20世紀に作られた大企業との競争関係にあるだけでなく、古い企業ではうまく適応できない、あるいは意味のある形では対応できない、まったく新たな意味での成功を定義するだろうということだ。

 この議論の中では、それらの新たな組織のことを「エッジ企業」と呼ぶことにする。「エッジ」という言葉を使うのは、それらの組織が大きな、一枚岩的組織ではないということを示している。われわれは依然として従来からのものの見方をしてしまいがちだが、それらの組織は少なくともわれわれが現在考えている企業とは異なるものになるはずだ。それらは極めて分散化されたものになるだろう。エッジ企業の力と価値は、エッジ企業自身が社会を構成する人々や事業体と深く結びついていること自体から生み出されることになるだろう。これは大規模で集約的な市場における地位から生じるものではない。ここで再びreCAPTCHAの例をひいて話を進めよう。

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