#4:(クラウド)顧客のための法務サービス
Robert Scoble氏がFacebookで経験したトラブルの事例(関連英文ブログ)を見ても分かるように、「誰が何を所有しているのか」ということに関しては、法律上の厄介な問題が山積みとなっている。データの所有権や、ベンダーの契約上の義務、法律上のプログラムコードの扱いといったことに関する訴訟の専門知識を提供することは、おいしい仕事となるはずである。
2008年1月、Robert Scoble氏はFacebookからアカウントを停止されてしまった。Scoble氏が自動化されたスクリプトを用いて同サービスから自らのソーシャルネットワークデータを読み出そうとしたため、Facebookは規約に抵触していると判断したわけである。その後に起こった騒ぎを見れば、クラウドコンピューティングには実に厄介な問題が存在しているということが分かるというものだろう。すなわち、パブリックなクラウドサービス上に置かれているデータを所有、統括するのは誰なのかという問題だ。
残念なことに、この問題に対する答えはまだ出ていない。このため、米国や欧州をはじめとする世界中の裁判所において、今後の判例となる訴訟が複数展開されるだろうと筆者は考えている。また、クラウド企業側の何らかの事故や契約違反行為にまつわる訴訟ももちろんビジネスになると言っておきたい。
#5:SaaS業界(あるいはSaaS顧客)の立場からデータ所有権を主張するロビイスト
上記4番の項目を前提とした場合、業界内の各団体は自らの利益を保護/拡大するために、議会での発言力を高めたいと考えるはずである。このため、オンライン上での平等さや個人の権利を台無しにするような法律の制定を推進するビジネスは有望ということになる。
筆者と意見を異にする人もいるだろうが、筆者はクラウドに関する政策をめぐって大きな争いが起こることになるだろうと考えており、いくつかの大手クラウドプロバイダーが自らのビジネスに有利な政策の制定に向けて、既にロビイストを手配しているという事実も知っている。一方、コンシューマーやエンタープライズの立場を代弁するロビイストの存在は耳に入ってきていないものの、そういったロビイストが登場するのも時間の問題であると確信している。
#6:システム管理者の再教育スペシャリスト
クラウドコンピューティングの隆盛によって多くのシステム管理者が仕事を失うことになる。このため彼らを再教育し、外部ベンダーが管理している自社の資産に対するサービス品質保証契約(SLA:Service Level Agreement)の遵守状況をまとめて監視できるようにしたり、顧客サービス担当者に電話が通じるまで辛抱強く待てるようにする必要がある。
実際のところ、システム管理者の「再教育」は既に始まっている。ただしそれは、それはシステム管理者の自主的なクラウドサービス試用や、実際のプロジェクト参画、およびデータセンターの仮想化による影響といったものの組み合わせによるものである。とは言うものの、システム管理者にとってのクラウドを楽なものにする、PuppetやChefといった新たなテクノロジによって、高度なアプリケーションに取り組む機会が与えられるだろう。また、開発者がクラウドコンピューティングで一歩先んじるために必要となるアーキテクチャや運用の教育といった素晴らしいビジネスチャンスも拓けるはずだ。