「プライベートクラウド」とは何なのか?
企業から見て分かりにくいのは、ここまで見てきたクラウドとは異なる「プライベートクラウド」の存在だ。
前出の甲元氏はプライベートクラウドについて「マーケティングワードとして捉えている」と話す。プライベートクラウドを発信するベンダーの多くは、クラウドをそのまま縮小してプライベートの領域に持ち込んだクラウドと説明する。オンデマンドで運用でき、使用料もきちんと課金できるから、従来のデータセンターや仮想サーバとは異なるのだと主張する。
「しかし、スケーラビリティの観点では、いわゆるパブリッククラウドとはたいへん大きな差がある」(甲元氏)
その通りだ。プライベートクラウドは、ひと昔前の「ユーティリティコンピューティング」と重なって見える。ユーティリティコンピューティングは、リソースを仮想化技術でプールし、いつでも使えるよう事前にセットアップした状態にしてデータセンターに納入する、という考え方だった。少し多めにリソースを用意しておき、リソースが足りなくなったら自動的にリソースを追加する仕組みを持っていた。
甲元氏は「かなり大きなグループ企業が、大量のリソースを集中させてクラウドを作らないと(プライベートクラウドの)メリットは出ないのではないか」と話す。バラバラな環境を寄せ集めただけではクラウドにならないし、規模の経済も働かないからだ。

「クラウドにするなら、少なくとも環境を標準化する必要があるが簡単ではない。しかし、日本企業のプライベートクラウドに寄せる期待はなぜか大きい」と甲元氏。企業は安く使えるパブリッククラウドを、まず試してクラウドを理解してほしいと話す。
クラウドでもカスタマイズしたい日本のユーザー
日本の企業はいま、3つのクラウドのうちのどのクラウドにメリットを感じているのだろうか。甲元氏によれば、それはPaaSの分野だという。
「日本においてはSalesforce.comのビジネスが成功している。Salesforce.comのアプリケーションが日本企業に採用されているのは、PaaS(Force.com)があるからだ」という。
Salesforce.comの大企業ユーザーのほとんどは、PaaSを使って何らかのカスタマイズを行っているという。Force.comを使用する割合は、日本が世界の中でも際立って高いのだそうだ。海外のユーザーはカスタマイズせず、そのまま使うケースがほとんどだ。日本のユーザーは世界一カスタマイズ好きということらしい。
一方で、クラウドについて日本のユーザーが心配するのは、可用性とセキュリティだという。