どのタイプのデスクトップ仮想化を選びますか?--それぞれのメリット、デメリット - (page 3)

栗原潔(テックバイザージェイピー)

2010-01-27 08:00

 結局、各方式の相違は各デスクトップ環境をどのレベルで分離するかという点に帰着する。各方式には一長一短があり万能の方式はないため、企業は自社の状況に合わせて選択するしかない。

 これら以外にも、「デスクトップ仮想化」と呼ばれることは少ないものの次のようなシンクライアントの実装方式がある。

ウェブブラウザ専用端末

 これはクライアント機器ではブラウザのみを稼働し、ウェブサーバにアクセスする方法である。1996年にOracleが発表したNC(ネットワークコンピュータ)はこの方式であり、その後このタイプのシンクライアント製品がいくつか発表された。これらの製品が市場で成功することはなかったが、今日においてこの方式に再度注目が集まる可能性がある。例えば、Googleが提供を予定しているChrome OSは、ネットブックなどのローエンドのPCをブラウザ専用機として稼働することを目指したものだ。クラウド化の流れに伴い、ウェブベースで稼働するソフトウェアの品揃えも充実しつつあることから、今後ともこの選択肢の価値は高まっていくだろう。

ネットワークブート

 これは過去にディスクレスワークステーションと呼ばれていた形態である。通常のPCのディスクをデスクトップ側には置かず、システムドライブも含めてサーバ側に置き、ネットワーク経由でソフトウェアをブートして使用する方式である。アプリケーションの実行はデスクトップ上で行われ、ネットワーク上で画面データやキーボード、マウスのイベントが転送されることがないため、ネットワークの遅延の影響を最小化できる。その一方で、すべてのディスクアクセスがネットワークを経由することになるので、そこが性能のボトルネックとなる可能性がある。

 これ以外にもブレードPC型でサーバとクライアント間の接続に(LANではない)独自のケーブルを使う方式もあったが、今日ではほとんど利用されていない。

高まるシンクライアントの普及率

 シンクライアントは決して新しいテクノロジーではなく、概念自体は昔から存在した。しかし、TCO削減、情報漏えい対策、フリーアクセス対応などへの要請が高まる中、シンクライアントの採用を多くの企業が検討してもよいタイミングが来ていると考えられる。日本情報システムユーザー協会(JUAS)による「企業IT動向調査2009」では、2007年から2008年にかけて日本企業のシンクライアントの普及率が3倍以上増加していることが判明している。シンクライアントもようやく「キャズム」を越える段階に来たと言ってよさそうだ。

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