アプリケーションストア--新たなデジタルビジネスモデルについて考えてみる - (page 3)

文:Dion Hinchcliffe 翻訳校正:石橋啓一郎 2010年02月05日 07時00分

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単なる流行か、希望の未来か

 これらのことから、プラットフォーム所有者にとってのアプリケーションストアモデルのメリットは、経済的な面からもコントロールの面からもかなり大きなものであることは明らかだ。等式のもう一辺にあるのは、初期投資と運営費であり、これもかなり大きなものになる可能性がある。また、アプリケーションストアがプラットフォームの所有による全体的な効果を増大させる可能性があることは確かだが、プラットフォーム所有者はセキュリティ、eコマース、顧客サービス事業などの事業に直接関わる必要があり、それらの事業は自らの中核事業からはかけ離れたものであるかも知れない。また、アプリケーションストアの立ち上げも困難に直面する可能性がある。アプリケーションストアを成功させるためには、早い時期にクリティカルマスを超える顧客を集め、十分に魅力的なアプリケーションを用意する必要がある。

 しかし、小規模なアプリケーションストアが、十分な水準の成功を収めている例も多い。デジタルペンメーカーのLivescribePalm Pre、任天堂が持つWiiのバーチャルコンソールなどは、顧客の規模とスタイルに応じた、優れたラインアップを提供している。

 前述の問題などから、魅力的なサービスを提供できる企業の数は限られており、少なくともアプリケーションストアインフラ企業が登場して、さまざまな企業がこのモデルを利用できるようになるまではこの状況は変わらないだろう。ウェブ自体にアプリケーションモデルがないことは残念だが、この問題についてはマッシュアップへの影響なども含め、別で議論したい。FacebookのアプリケーションやOpenSocialなどを含むソーシャルネットワーキングアプリケーションなど、規模が大きく興味深いアプリケーション市場の未来についても、別に考えたい。これらの市場では、アプリケーションストアの経済的な利点を逃す可能性があり、投資やサードパーティー開発者の増加についても不利になる可能性がある。

 一見、アプリケーションストアは、サードパーティーのアプリケーション開発者にとっては大きな後退のように見えるが、それほど悪いニュースでもない。アプリケーションストアモデルは、1990年代の憎むべき「囲い込みモデル」の上辺を変えたものだと考える人もいるが、この新しい世界ではアプリケーション開発者や顧客がこれまで以上に大きな支配力を持っていることは明らかだ。もちろん、このモデルを否定する人の意見は違う。Fast CompanyのFarhad Manjoo氏は、アプリケーションストアモデルを次のように批判している。

 このウェブの時代には、開発者は自分のプログラムを誰にも邪魔されずにエンドユーザーに届けることができる。したがって、束縛されたソフトウェア販売は、その潮流に逆らうものだ。

 残念ながら、私が最新のオンラインアプリケーションモデルについて検討した記事で指摘したように、モバイルデバイスでできることと、ウェブでできることは違う。モバイル専用アプリケーションは、それらがウェブに依存しているにもかかわらず、現在のウェブに対する数少ない本物の脅威の1つだ。この緊張関係は、モバイルデバイスがウェブとの主要な仲介点になるに従って今後数年間高まってくると考えられるが、アプリケーションストアはその例の1つに過ぎない。

 顧客とソフトウェア開発者にとって重要なのは、アプリケーションストアが信頼、セキュリティ、便利さをもたらすという点であり、ウェブにはこれらが欠けていることが多い。われわれの多くは、サービスやデバイスを安全かつ最大限に利用しようとする際、アプリケーションストアを魅力的なモデルだと考えるようになるだろう。サードパーティーアプリケーションをサポートできるプラットフォームを所有している企業は、自社が提供している商品についてよく検討し、より多くの経済的価値と、顧客の満足を作り出すために、アプリケーションストアを戦略的に選択できないかどうか考えてみるべきだ。私は、そのような企業の多くが、肯定的な答えを見いだすのではないかと思っている。

 [UPDATE] ChannelWebのSteven Burke氏は、「Don’t Bet Against An Amazon Kindle Apps Store Revolution」(AmazonのKindleアプリケーションストア改革が失敗する方に賭けるべきではない)という記事の中で、アプリケーションストアモデルとAmazonがこのモデルをKindleで生かせる可能性について、より肯定的に論じている。

 アプリケーションストアは一時的な成功に過ぎないのだろうか、それとも新たなソフトウェアの流通手段として広がるのだろうか。また何より、SalesforceのApp Exchangeのような、ビジネスソフトウェアのアプリケーションストアモデルは台頭するのだろうか。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ

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