一方で今回の新社長へのバトンタッチは、いわば最優先課題となった「出血」に歯止めがかかったということを示すものになったといえる。
実際、2009年度第3四半期(10〜12月)連結決算は、6四半期ぶりの最終黒字。通期黒字化は2010年度以降に持ち越すが、中西氏への社長打診があった昨年末というタイミングは、四半期ベースでの黒字化の目処がついたタイミングと重なる。止血を終えたいまの状況を捉え、川村氏は「これから攻めに転じる」と表現する。
つまり、新社長の中西氏には、「攻めの手腕」に期待がかかることになる。これまで「攻め40、守り60」だった体制を、これからは「攻め60、守り40」へと転換すると同時に、川村氏は中西次期社長に舵取りを託す。
次期社長の中西氏は、米IBMから買収後、長年に渡り赤字続きだったハードディスクの米子会社「日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)」を再建。その手腕が大きく評価されている。また、これまでの海外事業の経験に加え、情報通信、社会インフラの経験という点では、会長として代表権を持つ川村氏との補完関係も成立する。
日立の成長の鍵のひとつになると見られるグローバル化には最適な人材であるとともに、今後、日立製作所が強みを発揮するであろう領域と位置づけられるスマートグリッドに向けた展開にも、中西氏の経験が生きることになる。「社会イノベーション事業の中核となる電力、電機事業をグローバルに広げていきたい」「社会インフラと情報通信を融合できるのは日立の強み」としたのも、スマートグリッドを意識した発言と取ることができよう。
1946年生まれの63歳という年齢は、前社長の古川氏と同じ。古川氏が社長に就任した2006年には、日立製作所の社長としては、59歳の若さが指摘されたが、同い年である中西氏の今回の63歳での社長就任は、日立としては適齢ともいえる。
日立製作所の攻めの経営が、これからどんな形で業績に跳ね返ってくるのか。川村会長、中西社長体制での新生日立製作所はどうなるのか。今年、創業100周年を迎える同社の復活に注目が集まることになる。