日本IBMが研究成果を披露--2010年はSmarter Planet実現の研究推進 - (page 2)

山下竜大

2010-02-25 18:39

Smarter Planet実現を目指す日本IBMの研究開発

 2009年の日本IBMの研究開発チームの成果としては、まず顧客への貢献として、ブログの「テキストデータ」から「ユーザーの行動パターン」を複合的に分析する技術を開発することで、テキストネットワーク分析の実証研究を実施した。

 また、不適切な表現を前後の文脈を考慮して自動的に検出する音声テキスト分析技術を活用することで、未来型コールセンターを本格稼働。さらに仮想ディスクストレージ「IBM XIV Storage System」によるストレージクラウドの構築で、従来6〜25時間かかっていた障害復帰時間を30分に低減することを可能にしている。

 一方、製品開発における成果としては、クラウドコンピューティングに不可欠な最新ストレージ仮想化製品「IBM System Storage Virtualization Engine TS7700」を開発したほか、先進的なテキスト分析技術を取り入れたビジネス解析ミドルウェア製品「IBM Cognos Content Analytics V2.1」を開発している。

 そして2010年、日本IBMの研究開発チームが重点的に取り組む分野としては、産官学連携によるSmarter Planetの実現をリードすることだ。

 特に、エネルギー分野、交通情報分野を中心としたスマートな都市(Smarter Cities)、介護、予防医療、医療機器を中心としたスマートなヘルスケア(Smarter Healthcare)、プロトタイプを作ることなく自動車の設計開発を可能にするなど次世代の“もの作り”を目指すスマートなプロダクト(Smarter Products)の大きく3つの分野にフォーカスしている。

 このSmarter Planetを実現するための技術開発としては、これまでも推進してきたデータ分析と最適化を強化するほか、新たに「ストリームコンピューティング」「ハイブリッドシステム」の2つの技術の開発を推進していく。

 ストリームコンピューティングは、銀行トランザクションのようなOLTP処理とデータマイニングのようなバッチ処理の両方のメリットを兼ね備えた新しいデータ処理と、センサーなど、複数の情報ソースから取り込まれるデータを複合的に分析、判断し、即座に意思決定することを可能にする。

 久世氏は、「ストリームコンピューティングにより、株式の自動リコメンデーションやインテリジェントな交通/航空管理、より一層の製造ラインの最適化、遠隔医療、犯罪・不正防止、電波天文学など、さまざまな分野に応用することが可能になる」と話している。

 また、ハイブリッドシステムは、大量のデータを高速に処理する新しいシステム構築のための取り組み。従来、システムスピードは、約2年で2倍の拡張が行われてきたが、2年で4倍にすることを目指している。これにより「10年で約1000倍の性能向上を期待できるので、従来7万台のサーバを必要とした700Tops(Tera operations per second)のシステムを、ハイブリッドシステムでは2.4ラックで実現することができる」と久世氏は言う。

 この仕組みを実現するためにIBMでは、既存のサーバ製品の性能向上を行っていくことはもちろん、アプライアンス製品や物理スピードでのデータのやり取りを可能にするネットワークスピードサブシステム、IBMのスーパーコンピュータであるBlue Gean用のソフトウェアやコンパイラのソフトウェア開発技術などを最大限に活用していく。

 久世氏は「複数のアーキテクチャを組み合わせることが、ハイブリッドと呼ばれる由縁となっている」と話している。

 ハイブリッドシステムを実現することで、老朽化特性のモデル化による原子炉の寿命延長やシステム全体のモデル化による自動車産業や航空産業のコスト削減、防火対策のためのビル全体のシミュレーション、バーチャルハブによるプロセッサ開発、金融分野のバッチ処理におけるインタラクティブ化などの分野での効果が期待できるという。

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