紙の安全マップをデジタル化、将来のサービス向上にもつなげる
ヤマト運輸ではこれまでも、紙ベースで「安全集配ルートマップ」を集配エリアごとに作成し、「バス停方式」と呼ばれる集配方法と組み合わせることで、事故削減や走行距離短縮を図ってきた。集配車は荷物の量や集配先の違いにかかわらず、原則としてルートマップで決められた経路通りに走行し、経路上に設けられた駐車地点でしか駐車できない。駐車地点から集配先までは台車を利用する。このようなルールを定めることによって、集配車両を走らせる距離を削減し、駐車場所を探して走り回る手間をなくし、停止や再始動の回数も最小限にすることができる。
今回のSee-T Naviでは、安全集配ルートマップをデジタルデータ化することで、最新のルート情報をドライバー間で確実に共有できるようになる。また、従来のタコグラフでは記録紙をFAXで支店に送信していたが、燃費情報などを含む運行実績を日次かつドライバー単位で分析可能になることで、運行管理だけでなく運転指導にも役立てることが可能になる。
ヤマト運輸代表取締役社長の木川眞氏は、See-T Navi導入の背景を「当社は公共の道路を使って営業しており、いささかも安全をおろそかにしてはいけない。また、昨今CO2排出について世界的な議論があり、我々もそれに真剣に対応していく」と説明する。CO2排出については、新システム導入により1万8000トン程度の削減効果を期待しているという(同社のCO2排出量は2008年度実績で46万8000トン)。
同時に、See-T Naviを基幹システムと連携させることについて「機能だけを求めるなら、デジタルタコグラフを使えば分析はできる。しかし、それにとどまらず次のステップ、拡張性を持たせることで、安全とエコだけでなく、お客様の利便性を飛躍的に向上させるものにできないか」(木川氏)と話し、今回のシステム開発が単に安全や運行管理を目的としたものではないことを強調する。
安全とエコに関する取り組みは、あくまでSee-T Navi導入の「1次フェーズ」に位置づけられている。ヤマト運輸は今回の発表の中で、車載端末が「パソコンレベルの高性能を実現した」と表現しているが、この端末ではCPUとしてIntelのAtomを搭載するとともに、LinuxベースのOSを採用した。まさにパソコンそのものであり、当初必要とされる機能に対してはかなり余裕のある仕様になっている。
ヤマト運輸のITシステムは「業務改善」から「顧客との対話へ」
ヤマト運輸とNECでは既に2次フェーズの開発に着手しており、配達予定時刻を事前にメールで通知するサービスや、集荷依頼を受けた時点で車載端末に接続したプリンタから送り状を発行するサービスなどの実現に向けて準備を進めているという。また、従来はドライバーが電話で受けていた配達先の変更や集荷依頼を車載端末上に表示できるようにし、ドライバーの負荷低減とミス防止も図っていく予定。
木川氏は、従来のシステムが業務改善を主目的としていたのに対し、第7世代のシステムは「コミュニケーションのテクノロジーを駆使して、お客様と対話ができる形で営業を遂行する」ためのものと説明。情報および通信のシステムを駆使することにより、安全や環境配慮といった企業に求められる社会的責任の履行と、顧客満足度を高めるためのサービス向上を同時に図っていく考えを示した。