富士キメラ総研は、小学校、中学校、高等学校、大学向け(幼稚園、保育園、塾・予備校、専門学校は除く)の教育用ICT関連製品、システム、サービスなどの国内市場を調査した結果を報告書「文教市場マーケティング便覧 2010」としてまとめた。同調査では、教育システム・ソリューション4品目、教育・学習用ソフト3品目、教育用ハードウェア12品目の計19品目の市場と、校内LAN整備市場(ネットワーク機器及び施工費)を教育機関向けICT関連市場とし、調査分析したという。また、主要参入メーカー20社と主要ベンダー10社の事業展開の事例研究を行ったとしている。
同社によれば、2009年度の教育機関向けICT関連市場は、2009年度の補正予算に組み込まれた「スクールニューディール構想」の「教育現場におけるICT環境の整備」の影響を大きく受け、前年度比2.8倍の1414億円が見込まれるという。特に補正予算対象の教育用ハードウェアが大幅に伸びているとしている。
また、2010年度の市場は、需要が前倒しされたことによる反動で大幅な縮小が予測されるという。しかし、教育現場におけるICT関連製品、システム、サービスの普及率は依然として低く、国としてもICT利活用の普及・促進は課題のひとつとして、引き続きICTの環境整備は進められていくと同社では見ており、今後は新規需要にリプレース需要が加わって市場は拡大すると予測している。
報告書では、教育用ハードウェアにおいて、補正予算対象の液晶モニタやデジタルテレビ、電子黒板、デスクトップPC、ノートPCをはじめ12品目を対象としている。2009年度の市場は補正予算の対象品目が大幅に伸び、前年度比225.5%増の1201億円が見込まれるという。2010年度は反動で2008年度の市場を下回る規模になると予測している。また、2010年以降は、デスクトップPCやノートPC、ビジネスプロジェクタ、ページプリンタなど、品目によっては伸びるが、2011年度の市場は引き続き縮小し、プラスとなるのは2012年度からと予想している。
教育システム・ソリューションについては、遠隔授業・講義システム、eラーニング、教育コンテンツ配信サービス、教材作成・支援システムの4品目を対象としている。2009年度の市場は、前年度比5.6%増の38億円が見込まれるという。補正予算の対象ではないため急拡大はしないが、ICT教育(ICTを利用した授業)が徐々に普及していることもあり、各品目とも伸びており、今後も年率5%程度の増加が予測されるとしている。
教育・学習用ソフトにおいては、Flash型教材、教育・教材ソフト、教育用ビデオの3品目を対象としている。 2009年度の市場は前年度比25.0%増の15億円が見込まれるという。液晶モニタや電子黒板などの普及に伴い、教育・学習用ソフトの需要も増加。2010年度の市場は微増に留まるが、2011年度には新学習指導要領へ移行し教育用ビデオ需要の急増が予想されるため前年度比68.8%増の27億円に伸長するとみている。
校内LAN整備は、普通教室のLAN整備率100%が目標とされており、補正予算の対象となっていることから2009年度の市場は前年度比88.2%増の160億円が見込まれるという。2010年度には2008年度の市場を下回る規模となるが、以降は拡大推移に転じるとみている。
富士キメラ総研では、2009年度の注目市場として、2008年度に対して高い伸びが見込まれる補正予算対象品目のデジタルテレビ、電子黒板、ノートPCを挙げている。また、教育・校務用PCが伸びたことで、ページプリンタの伸びについても注目しているという。また、2012年度に2008年度に対して高い伸びが予測される品目は、デジタルテレビ、教材作成・支援システム、Flash型教材だという。
2009年6月、経済危機対策の一環として2009年度補正予算に組み込まれた「スクールニューディール構想」では、(1)校舎の耐震化の早期推進、(2)太陽光パネル採用をはじめとしたエコ化、(3)教育現場におけるICT環境の整備が、3本柱として掲げられ、このうち「教育現場におけるICT環境整備」には約2087億円の予算が計上された。同年8月の総選挙と政権交代に伴う補正予算見直しにより、40%強の約860億円が執行停止となったものの、例年以上にデジタルテレビや電子黒板、教育・校務用PCの導入、校内LAN整備を加速させた。