ミドルウェアの選択はすんなり決まったようだ。「当初はRDP(Remote Desktop Protocol)接続でも可能かと思いましたが、細かい接続制御などを簡単な運用でカバーしようと思うとやはりシンクライアントが必要だと考えました。シトリックスの製品は機能も豊富でしたし、あまり悩みもせず採用を決めました」と太田氏は話す。
他社のシステムも検討したようだが、特にミッションクリティカルな分野になると、MetaFrame時代からの実績でCitrix以外の選択肢がなかったということである。導入を決めた2006年当時は、他に選びようがなかったというのが実状かも知れない。
一方、シンクライアント端末はWyse Technologyの「V10L」を導入している。この端末についてはいろいろな製品を検討した。
「シンクライアントの端末側の製品は各社から出ていますが、キーボードのショートカットなどが通常のファットクライアントと同じ反応をするものというのがひとつの評価ポイントになりました。たとえばCtrl、Alt、Deleteなどのキーを押したときに、それにサーバが応えてくれないといけないということです。当社の社員はショートカットキーを多用するので、ファットクライアントと違う動きをすると困るという声がありました」
たとえば、Windowsベースの製品では端末側がそのキーの機能を吸収してしまい、Ctrl、Alt、Deleteで端末側をロックしてしまうケースもある。それだと今までファットクライアントを使っていたユーザーには違和感があるという声があった。いろいろな製品を評価したところ、置き換えのハードルが一番低かったのがWyseだったという。
しかし、このWyseですべてのユーザーニーズに対応できるというものでもない。Wyseはノート型がなく、またドライバも提供されないため、海外を含む出張など外出先で使いたいという要求はカバーできない。
「そこで当社のシンクライアントでは、リモートアクセスのサービスも一緒に導入しました。リモートアクセスするためにノート型のシンクライアントが必要ということで、Windows XP Embeddedベースの端末を導入しています。もちろん中身は何もありませんから、簡単に持ち出せるというメリットがあります」
このリモートアクセス用端末は緊急対応にも使っている。保守運用担当者は、リモートアクセス用端末を家に持ち帰り、夜間や休日の緊急対応に使うこともできる。この端末は約400台を導入。各事業本部が管理し、出張などの都度、端末を貸し出す形になっている。