重要だとわかっていても対応できない日本企業
また、CFOが重要性を認識している項目と、それに対して効率的に対応しているかどうかといった設問については、「経理財務業務のコスト削減の推進」において、日本とグローバルで大きな差が出た。グローバルでは61%が「重要性を認識して」おり、その52%が「効率的に対応している」と回答したのに対し、日本の企業では68%が重要性を認識していながらも、それに効率的に対応しているとの回答は37%に留まった。
さらに、日本の企業において、経理財務部門における人材育成については95%が重要性を認識しているとしたが、効率的に対応できている企業はわずか39%だった。
「日本の企業はグローバルの企業に比べて、重要性を認識しているとした項目に対して、効率的に対応できているかどうかという点でギャップが大きい傾向にある。とくに、コスト削減、人材育成、業務改善ではギャップが大きい」(松尾氏)
一方で、CFOの役割が大きく変化しており、「2005年の調査時には、『リスク管理・軽減に対する支援』『会社全体の情報統合の推進』は自らの仕事ではないとしていたCFOが多かったが、今回の調査では、それぞれ7割以上のCFOが“重要な仕事である”と回答した」という。リスク管理・軽減に対する支援では77%、会社全体の情報統合の推進では73%のCFOが「重要な仕事」と回答している。
松尾氏は「日本企業の経理財務部門がバリュー・インテグレーター化するには、業務効率化において、次々と変更があり複雑化する会計基準への対応、来るべきIFRSへの対応、グローバルへの進出に伴う業務の多様化、複雑化への対応が課題となっている。これらの課題に対応するためには、『グループ標準に関する経営理念』『共通・共用データ定義およびガバナンス』『勘定科目の共通化』『標準化・共通化された経理財務プロセス』の4つの観点で取り組んでいく必要がある。また、洞察力への挑戦では、膨大な情報の分析やそのためのテクノロジーの活用が必要であり、業務に精通し、的確な分析ができる人材の教育が急務である。これまで、経理財務部門では、『正しい記帳』をすることが求められていたが、現在では、よりビジネスサイドに寄って行くことが求められている。ビジネスサイドの知識を持つことで、経理財務部門がリーダーシップを発揮し、企業を引っ張っていくことがこれからの役割になる。日本の企業は人材の流動化が少ないため、業務の知識を持った人材を積極的に育成していく必要があるだろう」と述べた。