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「暗黙知の形式知化」では追いつけない!--スピード感を重視したナレッジ活用が企業の明暗を分ける - (page 2)

富永康信(ロビンソン)

2010-04-02 15:41

 当時の「Personal&Beauty」「Fabric&Homecare」「Health&Wellness」の各事業部がタテ割りで、世界に展開する24カ所の研究所もサイロ化し、重複した開発テーマに取り組んでいた。2万5000人の研究員の英知が集結できないまま、それぞれに課題解決に取り組むといったムダが横行していた。

 しかし、2000年に新たに就任したCEO、Alan Lafley氏の登場で状況は一変する。抜本的な改革に着手した同氏は、「コネクト&デベロップ」というオープンイノベーション活動に取り組み、社内外に存在する異なる領域の研究者や技術者を互いに結びつけることによって、斬新なアイデアの創発や問題の早期解決を目指した。

 この一環として、専門領域を超えてすべての研究員の英知を結びつけるため、「実践コミュニティ」(communities of practice)のコンセプトを活用した。

 実践コミュニティとは、あるテーマに関する知識や情報、熱意などを共有し、その分野のスキルやノウハウを組織の壁を越えた持続的な相互交流を通じて深めていく人の集団のことを指す。コンサルタントのEtienne Wenger氏が自著で提唱したことで知られるようになった概念である。

 P&Gは、このコンセプトに基づいて、世界共通のR&Dポータル「Innovation Net」を構築。その上に化学、パッケージ、生命科学といった100以上のテーマの「実践コミュニティ」を誕生させたのである。こうした活動により、部門や国を超えた新たな取り組みが実現し、R&Dの成功率が6割へと向上。売上高研究開発比率4.8%が3.4%へと削減できたのである。

P&G事例1 P&Gでは、リアルコムの「AskMe」を用いて各国研究者のネットワークを整備。実践コミュニティの構築に成功した。(出典:リアルコム、画像クリックで拡大表示)

「アリエール」のパッケージが黄ばむ原因を教えて!

 実践コミュニティの構築に貢献したツールは、米国のナレッジマネジメントソフトウェア専門企業であるAskMeの「AskMe Enterprise」(AskMe)である。AskMeは、2008年にリアルコムが子会社化している。

 AskMeでは、「Expertise Location」(「専門性の所在を明らかにする」という意味)と呼ばれる手法によって、組織内に埋もれた専門家の所在を明らかにすることで、組織が持つナレッジを最大限に利用して生産性向上を支援する。P&G以外にも、プラット・アンド・ホイットニー、マイクロソフトなどの企業や、米国国防総省などでも活用されているという。

 AskMeによるクラウドソーシングの成功例のひとつが、洗濯用洗剤として有名なブランド「アリエール」に発生した問題解決のケースだ。パッケージの色はブランドイメージを印象付ける重要な要素であるため、国ごとに定義されていた。にも関わらず、ブラジルの雑貨屋で陳列された製品のパッケージが、すぐに変色してしまうというトラブルが発生した。

 そこでプロダクトマネージャーは、AskMeのQ&A機能を使い、問題解決に最適な社内専門家を探し出し、その解決法を求めた。すると、すぐにその分野に詳しい米国の社員から回答を得ることができ、さらに同様の問題が他のエリアでも発生していることが明らかになった。

 原因は、不適切なインク製剤を用いた印刷方法にあった。そこで、適切なインク製剤を手配し、ブラジルで現地パッケージを再印刷することによって、この問題は解決されたという。AskMeによって実現したこのような環境がなければ、この種の問題解決には長い時間を要したはずだ。

「ポテトチップ」とイタリアの小さなパン屋との接点

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