NTT東日本では、当初は別のアプリケーション仮想化、配信の仕組みを検討していた。しかし、その製品は日本語にローカライズされておらず、NTTのようなISPが利用しサービスを行うためのライセンス形態もなかった。また、「アプリケーションを仮想化してパッケージングするツールであるシーケンサーが、App-Vのほうが圧倒的に使いやすいものでした」と、NTT東日本 コンシューマ事業推進本部 ブロードバンドサービス部 アライアンス推進担当の神田哲広氏はApp-Vを採用した理由を説明する。

このサービスのサポート窓口は、NTT東日本が用意している。ここへは、利用前の問い合わせはあるが、利用者からApp-Vに関連する技術的な問い合わせはないとのことだ。サポートの手間がないことは、ISPのNTTにもソフトウェアを提供するベンダーにもメリットは大きい。
個人利用の拡大には安価な費用設定がポイントに
アプリケーションを仮想化し配信するサービスのメリットは、SaaSと違って普段自分たちが利用しているアプリケーションと同じものをそのまま利用できることだ。その上で、前述のようにインストールが必要ないことも挙げられる。製品の更新も配信サーバ側で行えば、利用者側に自動的に更新分を配布でき、更新作業の手間もかからない。
中小企業や個人ユーザーを対象としたサービスの場合、さまざまなITスキルを持ったユーザーが利用することになる。ソフトウェアのインストールなど経験のないユーザーもいるだろう。そのため、クライアント側でインストールやセットアップなどの作業が必要ないことは、専任管理者を用意できない中小企業や個人事業主にとって大きなメリットとなる。また、今回のフレッツ・ソフト配信サービスは、月単位で利用でき、費用も利用した分しか発生しない。短期的に利用したいソフトウェアがある場合などには、パッケージ全体を購入する費用が発生せず安価に利用できる。これは、SaaSのメリットとローカルでアプリケーションを動かす利便性の双方を持ち合わせたサービスと言える。
現在、フレッツ・ソフト配信サービスには、中小企業などの利用を対象としたビジネス系の会計、人事、給与、見積、請求書作成ソフトなど、20種類が登録されている。このソフトの種類を「2011年3月までに約100種追加し、120ソフトまで伸ばしたい」と小野氏。また、今後は一般コンシューマーも対象とし、個人が利用するようなソフトウェアも増やしていくという。現在サポートしているクライアントの環境は、Windows XP ProfessionalかWindows Vista Business、Enterprise、Ultimateとなっているが、一般コンシューマー用サービスの提供に向け、2010年夏ごろまでにHome EditionやWindows 7などにも対応する予定だ。