ニフティ売却をめぐり関係が悪化
野副氏の辞任理由は当初の「病気療養」から、A社と「付き合い」を続けたことに変わっている。そのA社が関与していたのが、同社子会社ニフティの売却案件だ。2009年2月、野副氏が主導し、とあるIT企業(B社)にニフティを売却するという構想が進んでいた。しかし、A社の存在が問題となり、秋草氏は野副氏の部屋を訪れ注意。野副氏は「A社は怪しげなので(案件からは)外す」と約束したという。
その後もニフティの売却は二転三転する。A社が売却案件から外れたという前提で、B社によるニフティのデューデリエンス(資産調査)は進められていた。しかし、その情報が金融業界をめぐるにおよび、より高額な買収提案が複数提示されたという。野副氏はこの段階でB社への売却をいったん白紙に戻した。
2009年7月、野副氏はニフティの売却案件を再開する。富士通は野副氏がA社と連絡を取り続けていることを把握し、かつこの企業が反社会的勢力とつながりがあるなどの好ましくない調査報告を受けていた。加えて、ニフティ売却の会議にA社の日本代表が参加していることも明らかになっていたという。「野副氏はA社を外すと言いながら、ニフティの売却案件に関与させていることが明らかになった」と間塚氏は強調する。なお、富士通によれば、ニフティの売却を取締役会などで機関決定した事実はないという。
「私(間塚)は秋草さん、大浦さんと協議し、野副氏とA社との結びつきは強く、外すと言いながらなおも関係を続けるのは、当社取締役として不的確であると判断した。野副氏とA社日本代表が調査どおりの関係であれば、野副氏には辞任してもらう。辞任しなければ、やめてもらう(取締役会で解職する)ということで、(事前に)社外取締役から合意をもらった」(間塚氏)
間塚氏は「A社を売却案件から外す」としていた野副氏が関係を続けたことについて、「代表取締役が、取締役そして監査役と(外すと)約束した。軽い約束ではない。そういう約束は重いんです」とし、「もう(野副氏と、間塚・秋草・大浦氏の間で)信頼関係がなくなっている。注意しても止められないと判断した」としている。