富士通は、プライベートクラウド環境構築に必要なソフトウェア新製品4種、強化製品1種を4月14日に販売開始した。業務サービスの見える化、自動化技術による自動配備、自動運用、仮想化技術によるダイナミックリソース管理、SOAによるクラウドデータ連携などの機能を備え、ITILとSOAの技術を軸に、企業の情報システムを、それぞれの状況に応じ、段階的に最適化することを図っている。
今回、新製品として発売されたのは「Systemwalker Service Catalog Manager V14g」「Systemwalker Software Configuration Manager V14g」「Systemwalker Runbook Automation V14g」「ServerView Resource Orchestrator」の4製品。
Systemwalker Service Catalog Manager V14gは、開発環境や業務システムを、業務サービスとしてカタログ化(見える化)するソフトだ。利用部門は業務サービスを一覧することができ、必要な時にすぐに利用できる。また、運用部門は業務サービスの利用状況を容易に把握できるため、ICTシステムコストを最適に配分できるとともに、リソース計画の立案が可能となる。従来、各部門の要求に応じ、これらの環境やシステムを構築していた運用部門は、負荷が軽減される。
Systemwalker Software Configuration Manager V14gは、業務システムごとのOS、ミドルウェア、アプリケーションの組み合わせを、エンドユーザーの要求に応じて自動配備する機能を担う。また、ソフトの構成や修正適用の状況を、業務システム全体を通して、容易に確認することも可能だ。
Systemwalker Runbook Automation V14gは、運用手順書に従い、手作業で行っていた運用作業を自動化するソフト。同社はこれまでに蓄積してきた、豊富なシステム運用ノウハウをテンプレート化、部品化して、運用作業手順として提供しており、運用作業の負荷軽減と作業品質の向上が期待できる。
ServerView Resource Orchestratorは、仮想化技術により、サーバ、ストレージ、ネットワークなどのICTリソースを一元管理する機能をもっており、管理者が簡単な操作で迅速かつ動的に仮想システムの配備、提供を行える。
「Interstage Information Integrator」は今回、機能強化されており、SOAに準拠した技術によりパブリッククラウドとのデータ連携を可能にする。従来は、転送、異常発生時の再送処理、データ変換などの処理を導入企業ごとに構築しなければならなかったが、今後は、プログラミングすることなくデータ連携ができるようになる。当初は、Salesforce.comとの連携から開始し、順次、対応できるシステムを拡大していく予定だ。
標準価格(いずれも税別)はSystemwalker Service Catalog Manager V14gが14万5000円から。Systemwalker Software Configuration Manager V14gは10万円から。Systemwalker Runbook Automation V14gは15万円から。ServerView Resource Orchestrator V2.2は20万円から。Interstage Information Integrator V10.1は150万円からとなっている。新製品4種は2010年6月末から、Interstage Information Integratorは2010年7月末から出荷を開始する。
富士通執行役員常務、ソフトウェアビジネスグループ長の山中明氏は、同社の2009年度下期のクラウド商談の49%は「サーバ統合によるコスト削減」を求められた案件で、これに次いで26%だったのが「全社、グループ会社への共通サービス化、ガバナンス」についての案件だったことを指摘した。富士通ではこれらの要求に対応し、「サイロ化したシステムをいかにして最適化するかが重要になる。まず、仮想化でIT資産を集約し、コストを下げ、業務の実行、運用基盤を標準化、そして、プロセスを自動化する」という流れで全体最適化を図る意向であるという。今回の新製品や機能強化は、この指針に沿ったものだ。
これら5製品は、富士通社内で実際に利用してから提供されることになっており、同社のソフト製品の開発拠点である「沼津ソフトウェア開発クラウドセンター」で適用される。同センターでは、2010年度に国内6拠点の約1800台の開発サーバを約900台に集約し、プライベートクラウドを構築する計画という。同社は「これにより、2010年度で約7億円のコスト削減となる。開発環境構築に要する時間は、6時間から10分に短縮された。さらに約1340トンのCO2排出量の削減を見込んでおり、環境負荷低減にも貢献できる」としている。同センターは今後、企業のプライベートクラウド環境構築の移行検証、効果検証を行う拠点として拡充していく予定だ。
同社は、製品の積極展開を図り支援体制を強化する意向だ。クラウド技術に精通し、企業のシステム分析などもできる人材である「ICTエキスパート(クラウドアーキテクト)」を育成していく。現在、この要員は250人だが、今年度第1四半期中に700人規模に拡大。同社の国内約2万5000人の営業、SEと連携しながら、クラウドビジネスを推進していく。
また同社では、今回の製品群の発売にあわせ、プライベートクラウド支援サービスの提供も開始する。複数のメニューが用意されており、「見える化サービス」ではクラウド構築を目指す企業のシステム関連の業務、インフラの現状を見える化し、あるべき姿に向けたステップを提案する。「アプリケーション構築サービス」では、クラウド環境にアプリケーションを移行、構築する。「プライベートクラウドインフラ導入支援サービス」は、クラウドインフラのあるべき姿の提示、標準化されたインフラの設計、構築を行う。「プライベートクラウドマネジメントサービス」では、プライベートクラウドの運用を代行するという。
山中氏は「富士通の強みは、SI事業を何万件と手掛けた中で培ってきた実績を活かし、顧客といっしょに考え、システムを構築できることだ。他の大手ITベンダーも、クラウド向けソフトを整備しているが、実際に適用していく点で、我々には一日の長がある」と述べた。