大企業の計画値は大きく回復--中堅中小への波及に期待
例えば、「計画値」という観点で見ると、従業員数が1000人以上の企業では、2009年度にはDI値がマイナス18ポイントだったものが、2010年度ではマイナス4ポイントと、14ポイントもの改善が見られている。さらに、「2009年度は売上高が大きくなるほど、IT予算削減の影響が深刻であったが、2010年度は逆に売上高が大きい企業ほど、大きく揺れ戻している。特に売上高1兆円の企業ではDI値が、マイナス50からプラス13へと、63ポイントも増加している」とした。
大手企業を中心としたIT投資の回復感がどこまで広がるか、さらに、これが中堅中小企業にどう波及するかがこれからの注目点だといえよう。
一方、同調査では、いくつかの興味深い数値が明らかになっている。
中でも、クラウドや仮想化への取り組みについては、企業の最新技術への取り組みが浮き彫りになっている。例えば、仮想化に対しては、全体の集計では65%の企業が「導入済み」または「検討中」としたのに対して、売上高1兆円以上では、同様に回答した企業が実に97%を占めた。
JUASでは、「事業規模が大きい企業ほど仮想化への取り組みが積極的。サーバ統合やオープン化などへの対応が一段落した企業から、さらなるIT基盤の効率化を目指して、仮想化に本格的に取り組むケースが増えている」としている。
また、事業規模が大きい企業ほどプライベートクラウドおよびパブリッククラウドへの取り組みが進んでおり、全体の回答では、プライベートクラウドでは導入済みあるいは検討中が21%だが、売上高1兆円以上では67%が導入済みあるいは検討中と回答。パブリッククラウドでも、全体の回答では27%だが、売上高1兆円以上では54%が導入済みもしくは検討中と回答した。
しかし、導入目的は、いずれも「コスト削減」とする回答が多い。サーバの仮想化やストレージの仮想化では80%がコスト削減としたほか、プライベートクラウドでは62%、パブリッククラウドではSaaSが61%、PaaSが59%、IaaSでは63%が、コスト削減を目的としていることがわかった。
企業のIT投資が回復を見せないなか、コスト削減を目的として、仮想化、クラウドに注目が集まっていることが裏付けられる結果になった。