部署展開から全社、他社へのサービス展開を視野に--MSのApp-Vを採用したNTTデータ - (page 3)

宍戸周夫(テラメディア)

2010-04-22 12:00

 サーバからのプッシュ方式は、一律にアプリケーションが配信できるというメリットがあるという反面、クライアントの電源が落ちていると届かないし、ネットワークがつながっていなければ届かない。またファイヤーウォールがひとつ立っていてもアプリケーションは配信されない。その点App-Vは、ユーザーが使いたい時にプル方式で更新できる点がメリットだ。

最新版への期待

 導入効果は予想以上だった。現在アプリケーションの配信先として設定されているのは、Windows XP、Windows Vista、Windows 7の3つだが、クライアントPCの初期インストールに要する時間は、これまでの25分から2分へと大幅に短縮できた。また、その他のインストール作業でも、1台1回当たり0.5人時間の工数を削減できることが分かった。

 さらに大西氏は、「見えない効果」が大きいという。「作業時間の削減をアプリケーション管理コストに換算すると、効果はより大きいと思います。NTTデータの社内には約60のシステムが動いていますが、これがNTTグループ全体に広がるとその効果はかなり大きなものとなります。さらにNTTグループでは共通のシステムも稼働していますので、今後の展開次第ではApp-Vの導入効果はさらに拡大します」

 従来は、「アプリケーションがバージョンアップされたので、指定の日時までに更新して下さい」という通達が頻繁に送られてきた。それに個々人が対応するのは、時間の問題だけでなくトラブルの原因にもなる。また、今後はWindows XPやVistaからWindows 7へのマイグレーションが本格的に始まるが、OS基盤が変わる時には決まってアプリケーションの互換性の問題が出てくる。

 またNTTデータでは、現在Microsoft Officeのバージョン切り替え時期だという。社内では2003と2007が混在して使われているほか、MS開発部では2010のベータ版を利用している。「こうなると管理が大変です。そこで仮想化が求められているのです」と大西氏は話す。

 今後は、App-Vの全社展開、さらには他社への導入も視野に入れている。

 ここで可能性が広がるのがApp-Vの最新版バージョン4.6だ。4.6では、64ビットがサポートされたほか、適用範囲の拡大が図られた。

 従来はイントラネットでApp-Vを使うという形だったが、4.6ではブロードバンドインターネット経由でアプリケーションの管理や配信が可能になる。インターネット上にApp-Vのサーバを立てることで、SaaSやプライベートクラウドという形で常に最新版のアプリケーションが使える環境が整う。こうなると、App-Vの活用シーンはさらに拡大する。

 また、4.6が64ビット対応となったことで、App-Vのターミナルサーバへの適用が広がる可能性が出てきた。ターミナルサーバはパフォーマンスが求められるため、64ビットOSで構成されることが多いのだ。NTTデータにはターミナルサーバが数多く立っており、その中でのアプリケーションが展開できることになる。ターミナルサーバでアプリケーションを割り振るという形だ。

 「ターミナルサーバへのApp-Vの展開は魅力ですね。ターミナルサーバはひとつのマシンでプロファイルをいくつか持つモデルですが、アプリケーションは通常1人で使うように作られています。そのため、ひとつのレジストリの場所を変えてしまうと全部のソフトの設計が変わってしまいます。それをターミナルサーバに入れてしまうと、全部が個人の好みで変わってしまいますが、App-Vを使うと個別に対応できるのです。つまり、プロファイルを別にもつことができるわけです」(大西氏)

 App-Vの機能強化で、これまでの限界を超えることが可能になった。さらには全社展開、そして社外への展開も見えてきた。

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