SAPのプロジェクトは確かに問題だが、本当の問題はChristineがそのプロジェクトと一体になってしまっていることだ。問題のあるプロジェクトに効果的に対処するには（よいITリーダーはそうしているものだが）、監督すべきITプロジェクトとは離れた立場に立つ必要がある。
ITリーダーの役割は、ITプロジェクトのポートフォリオを扱うものであると考えるべきだ。CIOの仕事は、すべてのITプロジェクトのプロジェクトマネージャーになることではない。プロジェクトのチアリーダーとして振る舞うのをやめることだ。プロジェクトにはあまり個人的に入れ込むべきではない。CIOの仕事の中心は、正しいプロジェクトを正しい方法、正しい価格で進めることだということを忘れてはならない。
そもそもの始めから、CIOの声はリスク管理の面から心配するものであるべきだ。疑り深く振る舞わなくてはならない。CIOの役割は、「これはうまくいくのか？本当にできるのか？もしうまくいかなかったら？」といった、厳しい質問をすることだ。
ユーザーや、チームの部下、そしてベンダーに、すべてが大丈夫であることを証明させること。CIOの仕事は、プロジェクトが立ち上がり、スムーズに動き出すまでにリスクを洗い出すことだ。そしてプロジェクトチームに対して、自らが掲げた目標を達成するよう求めべきだ。
さらに、もっとも重要なのは、他の役員に対して、プロジェクトを提案しているのが自分であるという位置づけをしないということだ。それによって、自分自身が批判の対象になってしまう。その代わり、他の役員と同じ立場に立つようにする。問題のプロジェクトを見直す側に立つべきであり、悪いニュースを自ら伝える役に回ってはならない。
不幸なことに、Christineはそうしておらず、彼女は本当に窮地に陥っている。彼女は運営委員会になんと言っていいか思いつかないまま、会議室のドアに近づくにつれ、胃の具合が悪くなるのを感じている。彼女は助けを必要としていた。
彼女は、役員室への角を曲がるところで、信頼しているコンサルタントであるMartinにぶつかった。Martinは最近、彼女のために大規模なデータウェアハウスのプロジェクトを成功させたところだった。
「Martin、偶然会えて本当に助かった。アドバイスをちょうだい。このプロジェクトを中止する必要があるの。ひどく悪い方向に行ってるのよ」と彼女は言い、彼に問題を説明した。「どうしたらいいかしら」
MartinはChristineにどんなアドバイスをしただろうか。
*著者のMarc J. Schiller氏は、IT思想家、講演者であり、出版予定の著書に「The Eleven Secrets of Highly Influential IT Leaders」（影響力の強いITリーダーの7つの秘密）がある。同氏は過去20年以上に渡ってITリーダーとそのチームが、組織の中での影響力を強め、個人的にも職業的にもふさわしい報酬を受けるのを助けてきた。詳しくはhttp://marcjschiller.comを参照して欲しい。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
