ほとんどの組織には、何らかのかたちでそのリーダーが投影されている。つまり、組織のポリシーや流儀は、リーダーの信念や、その動機、生い立ちといったものに影響されているのである。本記事では、ビジネスリーダーらに対してライフコーチを務めている筆者が、こういったことの持つ良い面と悪い面について考察するうえでのポイントを説明する。
「我が社では、もはや成功や成長につながらない時代遅れの企業理念に基づいた決断がなされているのではないだろうか?」
この疑問は、収益の維持に苦戦している企業のトップから発せられたものである。彼は社長として、8年間に渡って同社を率いてきており、会社が経済危機を乗り越えられたのは彼の手腕によるものだと考えている従業員も数多くいる。リーダーシップにあふれた人物と見なされている彼は、成功の鍵となるものについてよく理解している。また、彼が口にした疑問から、ある環境においてこれまで適切であったことが、今では最善でなくなっているという可能性について彼が認識していることも見て取れる。
リーダーにとって、時間をかけ、自らの組織にとって最適なものが何かを熟考することは重要である。時は移ろいゆくものである。そして、それに従って企業に要求されることも変わってくるのだ。2005年のビジネス環境において成功したことが、2010年の今では足を引っ張ることになっているかもしれない。そこで、マネジメントの意志決定方法に目を向けてみると、以下のまったく異なった2つのアプローチが浮かび上がってくる。
- ある種の企業は伝統や形式を重視する風土を持っている。こういった企業においては、ほぼすべての部門、そして考えられるほとんどの状況において、詳細な規定や規則が設けられている。
- その一方、規定やポリシーがほとんど設けられていない企業もある。こういった企業においては、問題が発生した時点でその対処方法を決定するため、「ポリシー」というもの自体がより柔軟なコンセプトとなっている。
あなたの企業は上記のいずれのタイプに該当するだろうか?そして、そのタイプはあなたの企業にとって適切だと言えるだろうか?以下の3つの疑問を自らに問いかけてみてほしい。
- 総合的に見た場合、上述した2つのマネジメントアプローチのうち、いずれかによってより高い効果が生み出せるだろうか?そうであれば、そのアプローチは組織全体を通じ、どのような状況にあっても、そしていかなるマネジメントチームに対しても「ベストプラクティス」として適用することができるだろうか?
- 最善のアプローチは組織自体によって決定されるのだろうか?状況によっては、一方のアプローチが有効となるものの、他方のアプローチが有効とならない場合があるかもしれない。
- 組織として厳格でしっかりとしたポリシー集を用意しておいた方が良いような状況はあり得るだろうか?あるいはそういったものをまったく用意しておかない方がよい状況はあり得るだろうか?
こういった疑問に対する答えは、あなたが持っている価値観の根幹をなす信念体系に大きく依存している。そういった意味において、あなたの答えには、あなたが世の中をどう捉えているのかが反映されていると言える。
ここでちょっと次のことについて考えてみてほしい。あなたの価値観は楽観的なものだろうか、それとも悲観的なものだろうか?この問いに対するあなたの答えによって、上記のいずれのアプローチがあなたのマネジメントやリーダーシップのスタイルに適しているのかが変わってくるはずである。