レッドハットは5月13日、米Red Hatのセールス部門およびプロダクト部門のエグゼクティブ来日に伴い、今後の戦略についてプレス向け説明会を開催した。冒頭、レッドハット 代表取締役社長の廣川裕司氏が登壇し、今回の戦略説明会の内容は、日本法人が2010年度に目指している20%のビジネス成長を裏付けるためのものであり、そのために米国本社がどのような戦略を描いているかを説明するものだと説明した。
廣川氏によると、すでにRed HatはLinuxの会社でもなければ、単にJBossやKVMなどの製品を提供するベンダーではないとのこと。「パブリッククラウドにおけるRed Hat製品のシェアは現状で90%を超えている。クラウドの大きな波がやって来ており、Red Hatはクラウドの領域でのリーダー的な存在だ」と廣川氏はアピールした。
Red Hatのクラウドでの優位性は?
米Red Hat セールス部門 エグゼクティブバイスプレジデントのAlex Pinchev氏は、まずは世界および日本のビジネス状況について説明した。「2008年から2009年という世界中で経済状況が非常に厳しい時期にあっても、同社は収益も利益も目覚ましい成長を遂げることができた」とPinchev氏。特に、2010年2月期のアジア太平洋地域の成長率にはかなり高いものがあり、日本はそのなかでも58.5%の成長という実績を残した。Pinchev氏は、「日本の市場規模は世界2位であり、極めて重要な国だ。昨年度は急成長を遂げており、この成長は今後も続くと考えている」と話す。
オープンソースソフトウェア市場には、どのような企業であっても参入するのは容易だ。その市場で成功するには、顧客に対していかに付加価値を提供できるかにかかっており、「Red Hatがこれだけビジネスを成長させ企業のCIOから評価を得ていることは、顧客に価値を提供できた証しだ」とPinchev氏は言う。
ここ最近の傾向として、同社の製品はミッションクリティカル分野での採用が増えている。その1つの例として、富士通が構築した東京証券取引所の新システムを取り上げ、Red Hat Enterprise Linuxを用いてミリ秒単位での取引を実現できていることが報告された。ミッションクリティカル分野でのRed Hat製品の利用拡大は、日本だけでなく世界的にも拡大の傾向にあるとのことだ。
そして現在、Red HatはLinuxからITインフラを提供する企業へと大きく変革しつつある。特にクラウドにおけるインフラ提供では大きなシェアを獲得しており、これを成し遂げている理由としてPinchev氏は、クラウドの世界で仮想化、システム管理、Linux OSというインフラのサービスと、ミドルウェアや開発環境というプラットホームのサービスの2つを提供できるところにあることを挙げている。この優位性については、Red Hatだけがそう主張しているわけではなく、「NTTコミュニケーションズやIBMなど、世界中のクラウドサービスベンダーがRed Hat製品を採用していることでも裏付けられる。クラウドの世界で、このように成功を収めている企業は他にはない」とPinchev氏は自信をみせた。