Jazzの演奏家で理論から学んだ人はほとんどないでしょう。まずはあこがれのミュージシャンがいて、その人の演奏するお気に入りの曲やフレーズがあり、それをコピーすることから始まっています。徹底的にコピーする。音楽好きは、この努力の後に音楽理論を学ぶので、後は発見の連続ということになります。「ああ、僕のコピーしたフレーズはこういう構成になっているのか! では、他のコードでも試してみよう!」と、生きた理論が展開できるのです。いきなり論理的でそっけないドレミを暗記して弾き続けることとは大違いです。
英語も同じです。つまり、モチベーションを維持するためのあこがれの英語があってもいいはずなのです。だって、あこがれの英語に近づくための努力は苦痛ではないですよね。
私の小学校時代のあこがれは、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんでした。タケカワさんは当時、東京外国語大学の8年生。英語なまりの日本語が最高にかっこよく思え、よく彼の日本語をマネをしていました(笑)。また、社会人になってフランス人上司の下で働いた時は、フランス語なまりの英語にあこがれて、よくマネをしました。マネをする癖をつけると、どんな人の発音も気になってきます。その中から、自分の好みや心地よい発音が見つけられればベスト。あとはそれを目標にしていけばいいのです。見つからない人は…… 見つけるまで頑張りましょう!
音はリズムとピッチが命
マネの基本は、リズムとピッチ(音程)です。私は、英語を勉強したいと言う人に対し一番基礎的なCD付きの英語教材を進めてきました。英語が苦手だという人は、このような基礎的な教材を聞いて発音しても、全くマネをしていないことがわかります。リズム、アクセント、ピッチ、全然違う。単に言葉を自分の発音で声に出しているだけです。これは正直、百害あって一利なし。英語の発音の基本は、LとRの違いなどではなく、リズムとピッチなのです。リズムとピッチを執着して聞き、徹底的にマネをする。また、頭で翻訳する癖も絶対にやめるべきです。だから、あえて簡単な英語で基礎を定着させるよう勧めるのです。
では、どんな聞き方をすればいいのでしょうか。例えば、
- This is a pen.
というフレーズがCDから流れてきました。まずは音にだけ集中します。そしてリズムとピッチを頭で認識します。そうすると、頭の中では「This (this) is a (iza) Pen (pen)」という音になります。ここで、「This(これは)is a pen(ペンです)、ああ、これはペンです、という意味だな」などと日本語に訳すことは決してしないでください。日本語を頭にうかべないで、英語だけで理解する訓練も非常に大切だからです。
リズムに注意していれば、「is」と「a」は「iza」というひとつの単語のように聞こえるはずです。文章が簡単すぎて真剣に聞く気になれないなどと思わないこと。長く難しい文章の中に「is a」が登場しても結構聞き取れないものです。リズムがとれていれば、こうした連結部分の特性にすぐ気付くはずです。英語が苦手な人はとにかくきちんと聞いていません。きちんと聞くためには、難しい教材を用意してもだめなのです。まずは中学校1年生レベルの教材を1冊徹底的にやってみましょう。