つまり、Googleのようなサービスモデルへ一気に進むのではなく、あくまで収益の柱はライセンスモデルに置くということである。これだけクラウドとサービス化が喧伝される中で、この余裕の姿勢は、サービスモデルのような一見初期コストの低い仕組みであっても、スイッチングコストも含めた判断となれば、容易に顧客ベースが崩れることはないという読みがあるのだろう。
競争の沸騰点
今後、互換性の強化によりスイッチングコストの低下が進めば、その時こそGoogle Appsが大きくユーザー数を伸ばすチャンスかもしれない。しかし、Microsoftも無償のウェブ版を提供している以上、技術的にはGoogleへ対抗できる準備は整いつつあるに違いない。
むしろ、サービスモデルへの移行はできても、今それをする必要がないから、あえてライセンスモデルを維持しているといった方が正しいだろう。オフィススイートの持つスイッチングコストという壁を乗り越えて、どのように一度寡占となったマーケットが崩せるのか興味深く見守りたい。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。