時価総額で世界一のIT企業となったアップルに残る不安材料

大河原克行 2010年05月31日 14時04分

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 米国時間2010年5月26日、株式時価総額でAppleがMicrosoftを抜き去り、IT企業としては世界一となった

 創業年は、Microsoftが1975年、Appleは1年遅れの1976年。また、Microsoft会長のBill Gates氏は1955年10月28日生まれ、Apple創業者のSteve Jobs氏は1955年2月24日。この2人は、ほぼ同時期に生まれ、ほぼ同時期に会社を創業し、IT業界で成功を収めてきた。

 だが、順調に事業を拡大してきたMicrosoftとそれを指揮するGates氏に対して、Apple、そしてJobs氏は波乱の連続だ。

 Microsoftの事業面での成功については、あえて説明する必要もないかもしれない。1995年のWindows 95のヒットに代表されるように、PC市場においては独占的もいえる状況を確立し、その独占ぶりは独禁法当局などからも常に目をつけられる存在になったほどだ。また、1995年以降、昨年まで、世界長者番付でGates氏が1位の座を譲ったのは1回だけ。今年3月に米フォーブス誌が発表した番付では再び2位となったが、それでも資産総額は530億ドルに達する。

 これに対してJobs氏は、1985年にAppleを追われ、自ら「NeXT Computer」を設立。その後、1996年には再びAppleに復帰する。この時のAppleは「瀕死」ともいえる状況。Microsoftとの資本提携をきっかけに大幅な再編策を展開するとともに、iMacを皮切りとしたJobs氏のカリスマ性と表現力、完成度を生かした製品を次々と発表。その流れが、日本で28日に発売された「iPad」にもつながっている。

 5月28日、マイクロソフト社長の樋口泰行氏は、時価総額でAppleに抜かれたことに対して、次のように述べた。

 「ひとつのロゴ、ひとつのブランドでコンシューマーとビジネスの両方の事業をやる難しさがある。それは、企業向けビジネスの堅さと、コンシューマービジネスの柔らかさを持ちながら、戦い続ける難しさである。(時価総額の逆転については)瞬間的にはそうしたこともあるだろう。我々がやるべきことはユーザーの利益を追求することであり、モバイルもサーチも積極的に取り組んでいく考えだ」

 実はここに、マイクロソフトの盤石性がある。

 エンタープライズ向けやクラウドをはじめとするビジネス領域と、個人用PC向けの製品や、ネットワークサービス、Xboxといったコンシューマー領域の両面を持つことで、「一本足」でなく「二本足打法」をとれるということは、事業基盤としてはより強固であるともいえる。

 また、米Microsoftのコーポレートバイスプレジデント、Officeプロダクトマネジメントグループの沼本健氏も次のように語る。

 「一例をあげれば、いま学生がどんな形で携帯電話を活用しているのかを知ることは大変重要なこと。コミュニケーションの仕方、動画の使い方、保存ファイルの容量など、すべてが企業ユーザーの環境を上回っている。それを十分理解し、それに向けたコンシューマーサービスを提供した上で、企業ではどんな形で応用されるべきかといった提案やプロダクトの開発もできる。ここにビジネスとコンシューマーの両方をやっている強みがある」

 また、Gates氏が第一線を退いた後も、Microsoftの経営体制は盤石だ。一方、Jobs氏は2009年には病気療養のため半年間の休養に入ったが、このとき、Appleの株価は急落した。Gates氏は2008年6月に第一線を退き、約2年を経過している。Gates氏の影響力が薄まった余波が、じわじわと時価総額に表れてきたという見方もできなくはないが、Jobs氏ほどの急激な影響は見られない。多くの人が指摘するように、今の状況でJobs氏が仮に引退するようなことがあれば、Appleの時価総額が急落するのは間違いないだろう。

 時価総額で逆転し、トップに躍り出たAppleだが、長期的視点で将来を捉えると、不安材料がないわけではない。これからは、時価総額1位を維持し続けることができる盤石な体制づくりが課題とは言えないだろうか。

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